rainy queen ~光~ ページ2
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「わあー…降ってきちゃった」
なんとなくジメっとした空間。居心地は良くない、というか悪い。『今まで天気良かったんだから、ちょっとくらい休ませてね』…nameが太陽ならそう言いそうだ。青空を覆う厚くて黒っぽい雲が、まるで俺の心までも湿らせていくような。
ぽた、ぽたりと不規則な音をたてて屋根に落ちる雨の音がやたらと大きく響いた。
曇った窓の方に目をやると、口を尖らせたnameが不機嫌ですと言わんばかりに指先で窓に触れている。
口から漏れるのはため息。せっかく洗濯したのに…と、水滴のついた細い指を眺めていた。
ちろ、とこちらを睨むように見て、すり寄るnameは猫っぽい。けれどこっちの猫は城下町にいるやつらよりもずっと気まぐれで、そして何より「お利口」だ。勿論、皮肉。
「リンクはいつもnameちゃんに甘いわね」とウーリさんに言われたばかりだから、たまには意地悪してみるのも面白そうだ。案外俺も気分屋なのかもしれない。
にや、と口の端が釣り上がるのを押さえるように返事をした。
「…拗ねても雨は止まないけどな」
「拗ねてない」
「はは、怒るなよ」
「…、うるさいなっ」
予想どおりすぎてちょっと笑える。
そっぽ向いた癖に離れて行くことはしないんだ。
「素直じゃないよなあ」
「なによ」
「うるさいって言うなら」
「?」
「俺、帰っちゃうよ」
いいのかー?と焦らしてゆっくり立ち上がる素振りを見せたらnameの細い指が俺の服の裾を掴んだ。
「やだ」
「なんで?」
「………。さ、寒いから?」
寂しい、じゃなくて寒い、ね。たっぷり溜めたのに言うのはそれか。あと俺に聞くな。
そんなこと言われたら俺が寂しいだろ。心の中で嘆きつつ、表面では小さく笑っておいた。
掴んだまま離そうとしないで、何を言おうかと黙りこむnameがかわいくて仕方がない。恋は盲目なんて誰が言ったんだろうか。俺はいつも、こいつ以外のことが何もかも見えなくなってしまうんだ。
くしゃり、と柔らかい髪に指を通して、一向に俺を見ない顔をこちらに向けた。
わしゃわしゃと髪を乱したら少し抵抗されたけど、それからは何も言わずにおとなしく撫でられている。
そのまま緩く抱き締めて、甘い甘い君の匂いに酔いしれていたい。
こんな憂鬱な雨の日だって、君となら好きになれるのかもしれない。
そんな淡い考えは雨の音にかき消されてしまったけど。
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camille - カラヒツジさん» 初めまして、読んでくださってありがとうございます!最高だなんて!とても嬉しいです!ゼルダ、楽しいですよね。私も一番気に入ってます!頑張りますね(^^*) (2017年8月11日 15時) (レス) id: bccdb31748 (このIDを非表示/違反報告)
カラヒツジ(プロフ) - はじめまして!ゲームの中でゼル伝が一番好きで好きで!!リンクの小説がもう最高です!他のみんなも最高です!頑張ってくださいな!! (2017年8月11日 0時) (レス) id: fad247e788 (このIDを非表示/違反報告)
camille - アリアさん» 初めまして。わぁ、ほんとですか!ありがとうございます、とても嬉しいです!儚い恋ほど、私にはなんだかきれいに見えて、ついつい書いてしまうんですよ。そろそろマルスのお話も書きたいと思っていますので、これからもお付き合い頂けたら光栄です(^^*) (2017年4月30日 18時) (レス) id: 87a4171143 (このIDを非表示/違反報告)
アリア - はじめまして!part1のマルスのお話が切なくて読んでて泣きそうになりました...マルス大好きなのに夢小説少なくてがっかりしてたところに作者様の小説と出会えてとても嬉しいです!ゼルダも大好きなのでこれからも応援してます(*´∀`) (2017年4月30日 18時) (レス) id: ce2efe2a6e (このIDを非表示/違反報告)
camille - ずんだもちさん» 初めまして、コメントありがとうございます!気に入っていただけたようで光栄です(*^^*)文才は皆無ですよー!笑 だけど、そんな風に言ってもらえて、少し自信がもてました。たくさんの嬉しいお言葉、本当に感謝しています!ご期待に添えるよう頑張りますね。 (2017年3月30日 22時) (レス) id: 0ef14f60fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:camille | 作成日時:2017年1月4日 21時