しんろそうだん ページ35
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全中三連覇を成し遂げ、部活を引退したあとの話だ。
その頃私は進路を決めかねていた。バスケ部だった人間とはほとんど話すこともなく季節だけが過ぎていく。
そんな放課後に遭遇したのは緑間だった。
「ね、緑間。進路相談乗ってよ」
進路は自分で決めるものなのだよ、と目が語っていた。
無言は肯定だと都合良く解釈した私はそのまま言葉を紡ぐ。
「さつきと青峰は桐皇学園行くんだって」
「……」
「……黄瀬から海常に誘われてる」
「何が言いたい」
「幼馴染についていくか、誘ってくれた友人に付いていくか。どっちがいいのかなーって。そろそろ幼馴染離れした方がいいのかなーって」
緑間は真面目だから適当に流すように見えて真剣に聞いてくれるって確信してた。
その長い睫毛で縁取った瞳に、進路を不真面目に決めようとしている私はどう映ったのだろうか。睫毛の本数を数えながらぼんやり考えていた。
「……選択肢はその二択だけではないだろう」
「と、言いますと?」
「別の道でも良いはずだ。高校に希望はないのか」
「……校舎が綺麗で制服がカワイイとこがいい。セーラー服とか」
「ならそういう高校を探せば良いだろう。お前にはお前の道があるのだよ」
かっけー。
ボキャ貧の私にはこの言葉しか浮かばなかった。
緑間ってほんと真面目だなぁ。真面目過ぎて面白いなぁ。
「校舎が綺麗ってどこだろう。秀徳ってどうなの」
「……歴史の古い校舎だ」
「あ、ボロいんだ」
「その言い方はよせ」
「じゃあその逆……新設校とかかなぁ。探してみよーっと」
ありがとナノダヨー。と呟いたところで思った。私、緑間とあんまりバカな絡みしてないなぁ。
背を向けた緑間にしゃがんで、って言ったら渋々嫌々しゃがんでくれた。全部顔に出てるぞ。
「んふふ、緑間ダイスキ結婚して!」
「なっ!しない!離れろ!!」
「良いじゃん!私にも195cmの景色を見せろ!!」
「青峰に頼めば良いだろう!」
「緑間の方が姿勢良いじゃん!!」
振り落とされそうなのをなんとか緑間にしがみついてやった。
静かな廊下に騒ぎ声はたいそう響いたであろう。騒いでいると向かいから見慣れた黄色が見えた。
「……え、なにしてるんスか」
「進路相談!」
「は?ま、まさか緑間っち……Aっちを秀徳にかんゆ」
「する気もないし紺野の学力では足りないだろう!」
「あっ、今バカにしたな!?」
「事実だ!」
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