やりたいこと ページ3
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「はい、紫音ちゃん。あーん。」
「赤ちゃんじゃないんだけど。」
「でも一応食べるんだね。」
「それは……私じゃ箸使いづらいし、わざわざ魚毟って貰ってるし。」
今日の朝食は焼き魚(恐らく鱈)にご飯と味噌汁とおひたし等、いわゆる和食である。
吹雪が自分の朝食を後回しにしてまで紫音に食べさせてくれている理由は、主に2つ。
1つは、紫音が箸を上手く扱えないから。
フォークじゃなきゃダメ!と云うわけではなく、中学生以上が集う宿舎の箸は4歳が使うには大き過ぎるのだ。
もう1つは、紫音が魚を毟れないから。
どこが美味しくないとか、どの辺に骨があるとか、紫音にはサッパリわからない。
代わりに吹雪が身を解している…と云うことだ。
先程から紫音は吹雪が箸を口元まで持ってくるタイミングに合わせて口を開く。
あとは噛んで嚥下するだけ。世話役付きのお姫様にでもなった気分だ。
「食べる量もかなり少ないね。足りてる?」
「体が小さくなったから仕方ないよ。大丈夫、十分お腹いっぱいだから。」
しかし元の体に戻れた暁には体力や体重について色々と問題がありそうだ。
満腹になった紫音は膨れたお腹を擦りながら小さくご馳走様、と呟いた。
椅子の背もたれに頭をつけ、だらんと楽な姿勢になって今度は吹雪が食べ終わるのを待つ。
「今日練習ないんでしょ?何するの?」
紫音は食事中に話しかけてしまったので失敗した、と思ったが言ったことは取り消せない。
代わりに心の中でしっかり手を合わせて謝った。
そして食事の真っ最中に話しかけられた吹雪は嫌な顔1つせず、箸を動かす手を止めた。
「紫音ちゃんは何かやりたいことある?」
「えっと…」
ずっと部屋にこもるのは暇すぎる。
かと言ってぶらぶら外を出歩くのも却下。
本当にやりたいことを言ってもいいのなら、紫音の考えは既に決まっている。
「この建物に弾けるピアノがあったら嬉しいんだけど…。」
ストレートに「ピアノを弾きたい!」と言えなかったのが今更もどかしく思えた。
そんな紫音の思考を汲み取ってか、吹雪は柔らかく微笑んだ。
「じゃあ、後で監督に聞いてみようか。」
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ツナ(プロフ) - 怪盗あーるさん» わぁ、ありがとうございます!最近リアルでやらなきゃいけない事が溜まってるんですけど、更新途絶えないよう頑張ります(笑) (2020年4月27日 0時) (レス) id: 04f33d8056 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗あーる - いつも更新を楽しみにしています。これからも応援しています! (2020年4月26日 21時) (レス) id: 6e9264e8f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ | 作成日時:2020年4月7日 18時