東京卍會の姉貴

八戒▽ ページ34

『…お前とだけは話せるんだ…的な存在の彼女』

三｢想像力豊かか｣



ちげえよ、と隆が否定した。

でも私の時は無視したくせに目の前の可愛い子は呼び捨てで普通に喋ってんじゃん。

何、嫌がらせ？



三｢姉貴だよ、八戒の。柴柚葉｣

『ああ』



なるほど、と手を打つ。

そしたら柚葉ちゃんがこちらを向いた。



柚｢…誰？…ですか？｣

『私？花垣A』

柚｢花垣…武道の姉ちゃん？｣

『あれ、武道のこと知ってるの？』

柚｢や、まあ｣



後味悪いけど、まあそれはいい。

問題は八戒くんだ。



『お宅の弟くん何とかならない？会話できないんだけど』

柚｢コイツはずっとこう。時間かけて慣れてもらうしかない…ですね｣

『敬語いらない。Aって呼んでよ』

柚｢ん、アタシは柚葉って呼んで｣



よろしく、と言うとうん、と返してくれる柚葉。

柚葉が普通に話してくれる分、八戒が喋ってくれないのやっぱ悲しいというか、むかつくなあ。



『…よし』



それからというもの、私は八戒を見かける度に話かけまくった。

おはようとかバイバイとか元気？とか。

話しかけるというよりちょっかいをかけていた、の方が近いかもしれない。

一言でいいから言葉を交えたかった。



『中々上手くいかんね！』

三｢だから言ったろ｣



ある日の帰り道、偶然会った隆と帰りながらそう話す。

何度も見かけては話しかけを繰り返しているのに一向に返事はしてくれない。

虚しいしもうやめようかな。

八戒くんも迷惑かもしれないし。



三｢…｣



そしてその日の道中、やはり八戒くんに出会う。

隣には柚葉もいた。

どうせ声をかけても返ってこないんでしょ。

卑屈になっていた私は柚葉にだけ声をかけた。

隆は八戒くんに声をかけている。



『やほ、柚葉。一緒に帰らない？』

柚｢Aちゃんじゃん。いーよ帰ろ｣

三｢…八戒、ほら｣



そしたらコソコソと二人で話していた隆が八戒くんの背を押す。

八戒くんは私の前に立っていた。



『八戒くん？』

八｢…｣

三｢言うことあんだとよ。ほれシャンとしろ｣



バシンと背を叩いた隆に後押しされるようにあの！と八戒くんは言う。



八｢…八戒、でいい｣

『…え』

柚｢は、八戒がアタシ以外の女子と…？！｣



それだけ言うと隆の後ろに引っ込んでしまった。

でも今確かに言った。

私に対して、八戒でいい、と。



『…やば、なんか泣きそうなんだけど』

三｢大袈裟…ってほんとに泣くなよ！｣

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