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私は醜くない、年老いてなど無いと喚く鬼は先程の素早さを失っていた。
動きは鈍く、全く周囲を見れていない。
「子どもは嫌いじゃ。私より良く動く身体を、美しい肌を持っておる。憎い、あぁ憎い」
ゆらゆらとこちらへ寄ってくる鬼に刀を向けた。
許されない。この鬼は。
自分の勝手な老いへの執着で、沢山の子どもの命を奪ってきた。
もう、そんなことはさせないからね。
刀を握りしめ、鬼へ一歩踏み込もうとした時だった。
「な!!」
強風が鬼を中心に渦巻いた。
視界が遮られ、身体が煽られる。
瞬きをした、その一瞬。
「ぐあぁ!!」
気が付けば目の前に鬼の姿があり、腹を鋭い爪で突き刺された。
ドクドクと腹部から出血するのがわかる。
痛い。熱い、痛い痛い痛い。
呼吸で止血しようにも酸素が全く回らない。
「あぁッ」
刀を握り直す前に、腕を掴まれてしまった。
ぐり、と腕を捻られそうにそうになり、力を入れてそれを阻止する。
「子どもはの、腕を捻ったら大きな声で泣き叫ぶんじゃよ。痛い、止めてくれとなぁ。目玉をくり抜いたこともあった。子どもの叫び声は聞いていて楽しいんじゃ。それが私の遊びなんじゃ」
鬼の言葉に、思わず目を見開いた。
子どもの苦しむ姿を見るのが楽しい…?
本当はあと何十年も生きるはずだった子たちの未来をむざむざ奪うことを、遊びだというの…?
「__ふざけるな」
怒りで血管が破裂しそうになる。
『私の…子どもなの…急にいなくなって…』
涙を流す女の人の姿が浮かぶ。
大切な人を失った悲しみは、絶対に消えない。
守れなかった悔しさも、永遠に途絶えることはない。
命を奪うということは、残された人々の心を奪うということだ。
鬼の腕を振り払い、倒れた鬼に剣先を突き付ける。
「お前の自分の勝手な妄言を聞くのはもううんざりだ!!いいか、人の命は戻らない。お前の罪が無くなることはない。それは私がお前の頸を斬った後もずっとだ!」
自分の目から涙が溢れていくのがわかる。
私は弱くて、脆いから。
師匠とも杏寿郎とも違って、無力な人間だから。
自分の感情を鬼にぶつけることしかできない。
「黙れ、黙れ!!私は若いのじゃ!年寄りではな_____」
「あなたが黙って…」
鬼の頸に刀を振り下ろした。
断末魔が耳を突き、鬼とともに周囲の空間も崩れ落ちていく。
子どもたちの優しい慰めが聞こえた気がして、更に涙は溢れ出ていった。
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みーた(プロフ) - 麗羽さん» 泣かないでぇ(´;ω;`) (2019年10月12日 21時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
麗羽(プロフ) - 普通に泣きました……( ;∀;) (2019年10月12日 13時) (レス) id: 835b4d5769 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - みーたさん» ありがとうございます! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 483e5f8c50 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - ちぃさん» 申し訳ございませんでした!すぐにルビをふってまいりますので少々お待ちください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年9月29日 20時