婚姻届を書いてください!!【太宰治】

28話 ページ30

拝啓 太宰治さんへ

次の日曜日に政府主催のパーティに参加する事になったのですが、男女1組で参加が必須との事なので、招待状をお送りしました。予定が合わなければ送り返していただければ幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
太宰side


「大きいね……」

今、Aと会場である豪華客船の
中に居るのだけれど……

「そうですかね？」

広すぎて困っちゃうね。
目を離すと見失ってしまいそうだよ


「中にさえ入ってしまえば共に
行動する必要は無いそうです。

ご自由に行動なさって下さい」

そう言われても、
私は君と行動したいんだけどなぁ……

取り敢えず、
この船の間取りだけでも把握しておこうかな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
突き放して来たけど大丈夫かな？

私はパーティが苦手だからなぁ。
取り敢えず何時もの服からドレスに
着替えときます。


食事会場に足を運んでみたけど
太宰さんがいる気配は無かった。

…………別に気にしてないからね!!!


どのスイーツも美味しそうだなぁ……

「そのケーキ、美味しかったですよ」

「あら、ありがとうございます」





ん？

「えっと、どちら様でしょうか」

優しそうな顔してるなぁ。


「私、関西の方で
とある企業の社長をしている者です。
初めましてAさん。」

名前で呼ぶって事は、私の名字知らないのかな

「初めて会う人の事は名字で呼ぶのが
礼儀ではないのですか？」

「貴方こそ名前を分かっているのに
敢えて呼ばないのは失礼では無いのですか？」

なーんだ、分かってるんだ。
此処に来る時
来客全員の顔と名前を覚えている事。


「以前お会いした事ありましたっけ？」

「いえ、貴方様の記憶力が優れている事は有名なので。でも皆さん名字は知らないようでね。
教えて下さりませんか？」

「有名だなんて大袈裟な〜
私に名字はありませんよ、
これでよろしいですか？」

本当は覚えているけどね
あんな偽物の家族の名は使いたくない。



それに結婚してもないのに
太宰と名乗るのも図々しいもんね。


「それは失礼、
それにしても貴方様の事気に入りました。
向こうでゆっくりお話しませんか？」



ふと太宰さんの顔が浮かんだけど、
直ぐに書き消した。


付き合ってないのにこういう時だけ
会いたい、なんて烏滸がましすぎるね

29話→←27話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す