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二百四 同情 ページ4

黒雨は道の真ん中で傷だらけになって倒れている。

その傷は人間界で私たちが負わせたものではない。

黒く深い傷が淀んでいく。

私が寝ている間に攻め入ってきて元祖軍がやったことなのか、それでも何故私に言わないのか疑問が残る。


「ほっといてよ……っっ」


私は気づくと黒雨の前へ両膝をついていた。


「その傷は私たちが……?」


「関係……ない……っっいい加減にしてよ……」


雨に紛れ頬に伝う雫を私は見逃さなかった。


「……味方に?」


そう言うと黒雨は腕を振り払った。


「うるさい……‼あんな奴ら味方なんかじゃない……っっ‼」


黒雨はその手で私を突き飛ばした。


「……そう。じゃあ今ここで私を消せばいい。そうすればもう一度受け入れてくれる」


「違う……‼あれは違うんだ……っっ‼嘘ばかりだ……っっ」


頭を押さえ何度も何度も違うと、嘘だと唱えていた。

敵に同情だなんて私は思っていた以上に馬鹿のようだ。

黒雨は傷口を押さえもがき苦しむ。


「……待って。ここは寒い」


私は黒雨の腕を自分の首の後ろに回した。


「な、にしてるんだよ……っ。こんなことしたら君は……」



「私、あなたが思っている以上に頭が悪いんです」


私はお手洗いに使った家とは違う空き家に入った。

部屋の端にあった座布団を枕にして黒雨をそこに横たわらせた。


「俺の傷は治せない」


私は腹部についた大きな傷に手を当てた。

傷は塞がらなかった。


「姫の力はいつどんなときでも発揮する訳じゃない。姫自身の気持ち次第なんだよ。例えば嫌いな相手心の底から助けたいなんて思わない。姫のやってることは偽善そのもの。そこに気持ちなんてない」


黒雨の影から手が1本シュルシュルと伸びると私の体を掴んだ。


「必死に逃げるところをこうやって掴んで力任せに体を切り裂いた。えぐって弄んで最後はわざわざ姫の家の前に置いてあげたよ。……本当は恨んでるんでしょ」


赤い目がこちらを見る。


「……とても」


ほらね、と鼻で笑う。


「でもそれはあなたも同じではないのですか。私には身に覚えがありませんが、あなたには私に対する恨みを持っているようです」


「……これは俺の問題だ」


黒雨には私に恨みがあり問題の原点である。

存在そのものを消すことが目的であるのに、未だに私の体を掴む手は動きを見せない。


「……今私は一人です。動きはあなたが封じてる。絶好の機会だというのに何故見ないふりをしているんですか」

二百五 降る雨が止むように→←二百三 音の正体



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設定タグ:妖怪ウォッチ , オロチ , 剣城京菜   
作品ジャンル:アニメ
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時

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