さくらの営み 5【オロチ】 (ページ3)

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二百三音の正体ページ3

懐から取り出したのは手のひらサイズの小さな風呂敷だった。

白とピンクと黄緑の段染めがされていて、ところどころに金色が入っている。

結び目を外し、中から現れたのはカラフルな星だった。

「ぁ、金平糖ですね」

オロチさんは星を一粒摘んで私の口に放り込んだ。

じんわりと溶けるお砂糖は身も心も溶かしていく。

「単純な奴だ」

オロチさんは残りを包み直し、再び懐へしまった。

それから数時間後のことだった。

えんらえんらさんがやってきて、エンマ大王さまから撤退命令が出たという通達が来た。

予定地よりだいぶ先に進むことができ万が一を取り、一度戦力を回復する為のこと。

「他の軍も順調に進んでいる。怪我をしたものはいないそうだ」

オロチさんに連れられ外に出ると既に元祖軍の皆が私たちを待っていた。

まだ雨は降っている。

「屋敷に着くまでは油断はしないように」

土蜘蛛さんからの忠告を受け、私たちは屋敷の方へ歩みを進めた。

「……？」

何処か遠くで細い木が折れるような音が聞こえ、私は足を止めた。

他の皆は気づいていないらしい。

隣を歩いていたオロチさんが立ち止まりこちらを振り返る。

もしかしたら私は過敏になっているのかもしれない。

「あの、出発しだしておいてあれですけどお手洗いいきたいです」

「……先頭に伝える。遠くは行くな」

オロチさんはそう言って先頭に走っていった。

私は近くの空き家に入ってお手洗いに向かった。

用は済み、お手洗いから出るとまたどこからか妙な音を聞いた。

今度は木を爪でひっかくような音だった。

勝手なことをしてはいけないと分かってはいるが、私はその音の正体を知ることくらい些細なことだろうと軽視した。

音は裏からだ。

私は裏口の扉を開け、通りの様子を伺った。

そこで目撃したのは目を疑うような光景だった。

雨の中、道端で倒れている者がいた。

それだけではない。

その倒れている者は

「ち、かよるな……」

と言い、震えながら顔を上げる。

「……く、ろさめ……？」