二百二 雨 ページ2
冷たい光から温かい光が見え始めた。
結局朝までずっと肩を寄せ合っていて皆が起きる前に、私は家の中に戻り2階で寝たふりをした。
あまりにも平和過ぎて目的を忘れてしまいそうだった。
2日目、昨日と同じく小型の黒魔ばかりで黒雨のような知能のある黒魔と出くわすことはなかった。
何かあるのではないかと皆身構えていたものの、4日目の今日まではなんの音沙汰無く順調に進んでいた。
他の軍も順調に進んでいるそうだ。
「土蜘蛛殿、初日から進む距離が短くなっています。原因はAの体力低下かと思われます」
「……中途半端に制御している故、余計な体力を使うのだろう。えんらえんら、他の軍に今日はもう進まぬよう伝言頼む」
力を使うたび、疲労感が積み重なった。
道中何度か休息を挟んだが足がふらついた。
「すみません……」
泣きそうになりながら頭を下げると皆困った顔をした。
「限界まで無理させてしまった吾輩の責任だ。Aは4日間十分に働いてくれたのだ。誰も責めはするまい」
私はオロチさんに連れられ、近くの民宿のようなところに立ち入った。
1番奥の部屋に運ばれるとオロチさんは鍵を閉め、私を座布団の上に座らせた。
「無理はしないと約束したはずだが」
オロチさんは私の前に腰をおろした。
「無理はしてないです……。ただ、皆頑張って戦っているのに私ばかり疲れて休んで迷惑ばかりで……罪悪感と言いますか……」
「罪悪感なんて感じることはない。私たちとAとでは戦い方が違うだけで同等、それ以上の働きをしている。戦う力が残っているのはAの力があったからだ。Aがいなければここまで陣地へ踏み入ることもできなかった。もしまだ満足できないなら帰って十分に休んでから私が強くなる為の方法をいくらでも教え込んでやる。ただし弱音は許さないから覚悟はしろ」
お手柔らかに、と笑うとオロチさんは目を細めた。
窓を少しだけ開けてみるとしとしとと雨が降っていた。
「雨の日は無理に攻め入ることは最善ではない」
「何か関係が?」
「雨の日は聴覚があまり役に立たない。敵の僅かな音も雨の音でかき消されてしまうからだ。妖気を感じ取れる妖怪としてはあまり関係はないが大昔、人は敵の暗殺に雨の日を好んだ」
物騒だな、と思いながら雨の降る妖魔界を眺めていた。
薄っすらと霧もかかって少し不気味さも感じる。
「これでは今日は待機することになるだろう」
遠くの空をじっと見ていると窓を乱雑に閉められた。
ベッドに座り込むとオロチさんは懐を弄った。
「特別だ」
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時