115.我儘な大人 ページ25
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いつもみたいに家に着いて、
いつもみたいに大野さんの号室までの道を歩んで
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「...大野さん」
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いつもと違うのは、あなたが纏う空気。
あなたは優しくて、暖かい空気を纏っている。
...その奥に、どこか男らしさを感じる。
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智「はい、どうぞ」
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お邪魔します。と一つ声を掛ける。
カチャリとドアが閉まると、...なぜか冷気を感じた。
寒気が襲った。暖かみを欲した。
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「...大野さん...」
智「ん？」
「.....大野さん」
智「なに？Aちゃん」
「...智.....」
智「...」
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私は靴を脱いだけど、あなたはまだ脱いでいないようね。
玄関と廊下のところは少しの段差がある。
私はその段差の上にいるから、少しだけ大野さんの顔に近づけている。...気がする。
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大野さんの肩に顎を乗せると、意味もなく涙が溢れてきた。
今日、二宮さんに変なことを言われたこととか
...それを大野さんに打ち明けられない代わりに涙だけが溢れる。
体重のほとんどを大野さんに委ねる。
大野さんはそれに対して、一切怯みもせずしっかりと支えてくれる。
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智「Aちゃん」
「...」
智「...Aちゃん」
「...はい...」
智「Aちゃんが弱ってるのは、誰のせい？」
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ポロポロ流れる涙は圧力に逆らえないまま、
玄関の床に落ちるか、大野さんのコートに落ちるか。
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ぎゅ、っと大野さんの体を抱き締めると
大野さんは優しく私の背中を宥めるようにぽんぽんと摩る。
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智「...二宮のせいだね」
「...う...」
智「...ほら図星」
「大野さ.....」
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あなたをこれ以上泣かせちゃいけない。
本当はあなたは幸せになるべき人よ。
...それは、私じゃない人と。
こんな最低な女と付き合ってちゃダメだよ。
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智「...自分を責めないで。Aちゃん。」
「...」
智「...Aちゃんは悪くない。」
「...」
智「悪いのは、俺だよ」
「...え？」
智「...ごめんね」
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悪くなんかない。
あなたは悪くなんかない。
確かに、嘘はついてた。
...でもそれはあなたがあやつり人形にさせられてただけじゃない。
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「こっちを向いて？」
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大人というものは、非常に我儘で。
我慢なんて、簡単にはできない。
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あなたの唇に私の唇を寄せたら
あなたはそれを受け入れた。
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116.どうやらコイツも嘘つきだったらしい…sideO→←114.優しいあなたを二度裏切ることなんてできません。私には。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2017年12月13日 22時
