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story9*濡れた蓬髪 ページ11

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ずぶ濡れの太宰さんの姿を見て、慌ててデスクに常備してあるタオルを差し出す私。


太宰さんはにこやかに受け取った。




「も、もう!やっぱり入水なんてしない方が良かったじゃないですか……こんなにびしょびしょになってしまって……」




私は眉を下げ、彼を見つめた。



というか、今更だけど入水して必ず生きて帰って来るなんて凄いと思う。


生命力に驚かされるばかりだ。




晶子さんが医務室から大きいバスタオルを取ってくると、何故か私に渡してきた。


はてなマークを浮かべる私に、にんまりと人の悪い笑みを浮かべた晶子さんが云う。




「拭いてやりなよ。」


「え、あ、はい」




私が素直にタオルを受け取ったことに、何故か驚いている晶子さん。


私は太宰さんに近付くと、背伸びをして彼の柔らかな髪の毛に手を掛けた。




「太宰さんの髪の毛、濡れてもふわふわしてますね」


「……………」




わしゃわしゃと髪を拭いていると、太宰さんが驚いた顔で黙ってこちらを見つめていた。



…………何かしてしまったのだろうか。


そう考えているところで、すぐに気付いた。




「あ、あ……!ごめんなさ、勝手に!!」




私、太宰さんの髪を拭くの許可とってない……!!


若しかしたら嫌だったかもしれない。そう考えると恥ずかしくて急に顔が赤くなってきた。



晶子さんが笑いを堪えきれないでいるが、軽くパニックを起こしている私の目には入らない。




「あの、その、あ、ご、ごめんなさ、!?」


「ぷっ………あははっ!」




見事にうろたえる私の耳にやっと届いたのは、笑い声を隠そうともしない太宰さんの声。


その声を聞き、何処か冷静になった。




「あの、太宰さん、」


「ふふ………いやね、驚いていたのは嫌だったからではないよ。」




まだ顔の熱が引かない私の頭を優しく撫で、太宰さんは顔を近づけた。


驚いていて顔を上げると、すぐ側に彼の綺麗な顔があった。




「私の髪を拭いてくれている姿が余りにも可愛らしくてね。ついつい固まってしまったよ。」




にやり、と効果音が付きそうな表情。


絶対に確信犯だと分かっていても、格好いいって思ってしまう。




「じゃ、じゃあ…………拭きますね……?」




紅潮する頬を自覚しながら、私は太宰さんを見上げた。


すると、いきなり私の肩にもたれ掛かる彼。




「え!?え!?」


(あー、本当に可愛い………)




濡れた髪の毛がくすぐったかったです。



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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時

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