夏の夜と天の川 ページ25
「…そーいやお前、よくよく見ればなんでパジャマ着てんの?」
『寝ようとしてたんだもん』
「いや散歩するんだったら上になんか羽織ってくるなりしろよ……無防備なことこの上ねー」
『…呪霊に?』
「…そんなところだな」
他愛もない話をしながら、夜の高専を歩いていく私たち。
空を見上げれば満天の星空。
その中央には、思わず息を飲んでしまうほどの天の川がこれまた見事に架かっていた。
少し離れたところには夏の大三角や白鳥座、こと座なんかも見える。
『東京でも、こんなに綺麗に星空が見えるんだ』
「…確かにな」
『ね、すごい綺麗……』
あれがアルタイルで、あれがベガでしょ。あ、デネブも見つけた。
やっぱり、星空を眺めるのは好きだなぁ。
この雄大な夜空を眺めるだけでも自分の心が洗われていく気がする。
悩んでることとか、そういう細かいことが全部どうでも良くなるような……そんな力が、星空にはあると思うんだ、私。
…って、なんだかロマンチストみたい。
こんな状況だからか、柄にもないことを考えてしまった私は『ね、ホントに綺麗だよね五条!』と照れ隠しもほどほどに、隣の五条にそう声をかけた。
それに反応した五条はフッ、と柔らかく笑ってこう言った。
「…確かに、綺麗なもんだな」
と。
――星空ではなく、私の目を見据えながら。
『………あ……』
私の視線は、その蒼い碧い双眸に独占された。
……熱い。
体が、燃え上がるように熱い。
どうしてそんな言葉を、わざわざ私の目を見て言ってきたの…?
うまく汲み取れないその言動の真意に、私は心を乱される。
…五条が言った「綺麗」の対象。
それは、あの時点で考えると……いや、考えてしまうに…。
私をパニックに陥らせるには十分な言葉に、そのまま何も言えずただただ硬直していると。
「なーに俺のことガン見してんだよ、A」
『あ……、あゃ、その…………』
「…ま、今のは合格にしておいてやるか」
『なっ、なんなのよっ!!』
慌てたふためいた後に、上ずった声でそう言った私を見て、満足気に笑みを浮かべる五条。
その口元に描かれた弧を見て、私は更に頭が疑問符で埋め尽くされた。
…合格って一体なんの話なんだろうか。でもそれは多分、五条にしか分からない何かなんだろう。
でもその何かが気になるのが人間というもの。
まぁ、今ので考える余裕なんかなくなったけど。
こうして、夜は更けていく。
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作者名:すば | 作成日時:2022年11月20日 20時