【山本猛虎】これから変わる・1 ページ22
*
「――山本君ってさ、私のことマネージャーに誘ったのに、全然私と話してくれなくなったよね」
「…………え」
私が蛇口を締めると、ぴたりと彼の動きが止まった。
AA、17歳。音駒高校男子バレー部マネージャー。
私は元から、特にバレーボールに興味があったわけじゃない。ルールはなんとなく知っていて、テレビで試合がやっていたら少し見るだけ。そんなレベルの話だった。
なのに、どうして私が今こうしてバレー部のマネージャーをやっているかというと。きっかけはそう、目の前で固まっている彼だった。
数ヶ月前、私は教室の前で固まっていた山本君に声をかけた。
どうやらマネージャーの勧誘をしようとしていた山本君は、どう声をかけたらいいかわからなくて固まっていたらしい。
そこに偶然か必然か黒尾先輩が通りがかって、先輩の巧みな勧誘にまんまと乗っかってしまったのが私だった。
さて、そんなのは昔の話。いつだって一番大事なのは今現在である。
こういう経緯で晴れて私はマネージャーになったんだけど、どうしてだか山本君と話す回数は日に日に少なくなっているのだ。
黒尾先輩やリエーフ君とよく話すから、ただ単にその差で少なく感じているからかもしれないけれど。
ずっと、気になっていた。
「別に深刻な問題じゃないんだけどね。ただ、どうしてかなあって思って」
「…………」
「私が、気になっているだけなの」
返事がないことに寂しさを覚える。
休日の部活、たまたま休憩時間に水道のところで二人になっただけだ。それでも何か、あるんじゃないかとほのかに期待していた。
期待に反して山本君は変わらず何も喋らなかったけど、ただ横でさりげなく手伝ってくれるから。……やっぱり、期待してしまう。
「失礼な言い方だけどね、なんか変だなあって、」
「……べ、つに、変じゃないッスよ」
「…………え」
まさか急に声が聞けるなんて思っていなくて。本当に不意打ちだったから、思わず畳んだタオルを水道にぼちゃんするところだった。
私が驚きでぽかんとしている間に、山本君はしどろもどろになりながらも話す。
「っ、Aさんが悪いとかじゃないんで!! ……気にしないで下さい」
「でも……」
「大丈夫、です」
言いかけた口を閉じる。
同級生なのに敬語なのも、苗字にさん付けなのも(あ、それは皆そうか)、ぎこちなさと遠慮が混ざっていて。
それってやっぱり私が「女子」だからかなあ、と思った。
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スマトラ島のラフレシア(プロフ) - ★マチャキ★さん» 好きだったらだいたい書いてますよー。 (2016年7月20日 19時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
★マチャキ★ - 照ちゃんあった!! (2016年7月19日 20時) (レス) id: a549331ee4 (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» そしてお察しの通り、及川さん大好きです。色々書きたくなるので、最初と最後に入れてるだけなんですけどね。前作も前々作も読んでくださってありがとうございます!更新頑張ります!! (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
スマトラ島のラフレシア(プロフ) - 彗華@京都へ行きたい (元:凰華)さん» コメントありがとうございます!とんでもない、長文コメント最高に嬉しいです…!!私も実は「この続き書きたいなぁ」なんて毎回思ってまして、うーん……したい、ですねぇ……(笑) (2016年4月18日 18時) (レス) id: db820b405d (このIDを非表示/違反報告)
彗華@京都へ行きたい (元:凰華)(プロフ) - 前作、前々作を見て思ったのですが【及川さんで始まり及川さんで終わる】というループみたいなものが出来ているように感じました。作者様は及川さんが好きなのでしょうか?更新頑張ってください。応援しています!(長くなってしまいすみません) (2016年4月17日 22時) (レス) id: 4e64820097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スマトラ島のラフレシア | 作成日時:2016年4月14日 18時