選ばれし者とその妹２ (ページ25)

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Story 75 ページ25

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　新学期初日。
　Aは早めに朝食を済ませると、真っ先に図書館を訪れた。早朝ということもあって生徒は他にいないと思われたが、生真面目な監督生パーシー・ウィーズリーは別だった。

「やあA。調べものかな？」

「ええ、少し気になることがあったので」

　軽く挨拶を終え、Aは闇の魔法生物についての書物を棚から引っ張り出して近くの席に座った。パラパラとページをめくり、吸魂鬼の箇所で止める。
　

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　吸魂鬼とは世界で最もおぞましい闇の生き物とされている。彼らは人間の幸福を餌にし、近くにいる人に絶望と憂鬱をもたらす一方で、人間の魂を奪うことができ、奪われた人間は永遠の昏睡状態に陥る。

　吸魂鬼は情を持たぬ残虐な性質を持ち、吸収する人間を提供しない限りは誰にも忠実ではない。

　吸魂鬼に対する唯一の防衛手段は守護霊の呪文だが、とても高度な魔法のため、ほとんどの魔法使いは彼らに対して無力である。
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「守護霊の呪文……」

　姿くらましや目くらましといった難易度の高い魔法は陰で習得したが、対吸魂鬼の魔法は未習得だった。
　さらに吸魂鬼の歴史を読んだAは目を見開く。

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　……かつてアズカバンは闇の魔術師エクリジスが築いた要塞だと言われている。エクリジスはその要塞で魔法使いやマグルを対象に拷問と人体実験を繰り返した。吸魂鬼の正体はその犠牲者だという説もある。

　彼の死後、廃墟となった要塞を訪れた調査隊はそこで無数にうごめく吸魂鬼を発見した。報復を恐れた魔法省はこの闇の魔物たちを追い払うことができず、この巨大な要塞をそのまま残すことに決めた。

　その要塞の堅牢さと吸魂鬼の恐ろしさを見込んだダモクレス・ロウル魔法大臣は要塞を監獄として使用することを決定し、この闇の生物を看守とする政策を打ち出したのである。しかしながらそれは建前であり、本当のところはこの穢れた生き物を監獄に留めるためのもので……
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　Aは本を押しやり、机に突っ伏した。必死に声を抑えても、呼吸を落ち着けることはできない。

　ただ、吸魂鬼への対処法を知りたかっただけなのに。こんなはずではなかった。こんなはずでは……。