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追憶モラトリアム 2 ページ10

「いや、お前がこの国から出ようとしていると聞いてな。理由を聞きに……と様子見、だな」

「あっそう。じゃあ様子見終わったでしょ。とっとと戻ればぁ?」

「まだ出て行こうとする理由を聞いてない」

うへぁ、と顔を歪めて言えばそう返された。
なんか揚げ足取られた感じでイラつく。

「僕にはやらなきゃいけないことがあるから」

「それはなんだ?」

「君に言う義理はない」

ニコニコと笑うシンドバッドは本当に余裕そうで。
本当にこいつは僕の神経逆撫でするなぁ、なんて。

「それぐらい教えてくれたっていいだろう?」

「い、や、だ」

お前なんかに誰が教えるもんか。
ふい、とシンドバッドから顔を逸らす。
我ながら子供らしいと思うけど、そんなん気にするのもアホらしい。

「そうか……。分かった」

「はい?」

あれ、終わり?
もっと追求されるかと思ったのに意外。

「どうした?」

「え、あ、いや……あっさり引くんだなって」

「焦る必要がないからな」

笑顔を絶やさず言うシンドバッド。
なにそれどういうことだ。
てか部屋に入ってくんな近づくな。

「なんだよ焦る必要がないって」

露骨に嫌な表情を浮かべる。
けど、シンドバッドの奴はそんなん気にする素振りもなく歩み寄って来た。
なんだなんだなんだ。

「ん? だってそうだろう。お前はしばらくここにいるんだからな」

「はあ?」

「その腕輪は簡単には外せない。そう作らせたからな。お前から理由を聞く時間はたっぷりあるというわけだ」

「っのやろぉ」

爽やかに、且つにこやかに言われた言葉に口元が引き攣る感覚。
引き攣る笑みを浮かべて吐き出した声は恨みと苛立たしさを含んでいて。
許されるならこいつここで殺したい……。

「これから長い付き合いになるんだ。よろしくな、A」

そう言って、シンドバッドは手を伸ばす。
反射的に僕の体が跳ねて、そのまま固まった。
よく分からないけど、どうやら腕輪をつけられたこともあって警戒しての反応っぽい。

頭の隅でぐるりと回った思考は、けれど行動には移せずに。
固まったまま、シンドバッドの手を眺めていた。


ぽん


頭に何かが乗る感覚。
かと思えば、くしゃりと頭を混ぜられた。
思考が一時停止する。

「ぇ……」

「どうした?」


笑みをたたえたままの声色でシンドバッドが問う。

……あれ、いま僕、撫でられてる……?

頭がそれをやっと認識する。
途端、ザッと頭の中で昔の出来事がフラッシュバックした。

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みかん(プロフ) - 了解しました!続きも楽しみに気長に待ってます! (2019年5月28日 13時) (レス) id: 7884fe9a14 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» お待たせ致しました。リクエスト作品が出来上がりましたのでお伝え致します……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - みかんさん» 申し訳ありません、先に白龍の分ができあがりましたのでこちらを先に公開致します。続きはもう少々お待ちください……! (2019年5月28日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - あいさん» 了解です! 他のリクエストも消化しつつになるので少し遅れますが、ご了承くださいませ…… (2019年5月1日 14時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
あい - そうだったのですかこちらこそすみません (2019年5月1日 11時) (レス) id: bcb6bd7e00 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年3月1日 2時

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