白（黒）人魚は二重人格！？ (ページ12)

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10話ページ12

ウツボの片割れが、岩陰のやつを庇ったんだ。
俺の歯がしっかりと脇腹にくい込んでいて、視界が真っ赤に染まる。

僕は初めて、命を奪ってしまったのではないかと、心底怖くなった。

｢ジェ、ジェイド……っ！！？！？｣

｢大丈夫！？ジェイド！？｣

岩陰から出てきたのはタコの人魚。
ぐったりとした、ウツボの片割れを支え涙目でこちらを睨んでいた。

｢お前…許さない。ジェイドに謝れっ！｣

ウツボの片割れも、涙を流して怒りを露わにしていた。

｢貴方のせいで、ジェイドが死んでしまったら……どうしてくれるんですか！！！｣

命を奪うつもりはなくて。ただ、僕は強いんだって。
シロイルカじゃないんだって、知って欲しかっただけだったのに…。

『……ご、ごめん……ごめんっ……！！』

｢謝って済むことじゃねぇんだよっ！！！｣

『……っ！！』

ウツボの片割れは僕に巻きついて、苦しいほど締めた。
息が出来なくて、このまま死ぬんだって。
そう思ったんだ。

それが、今までたくさんの人魚たちを傷つけた、僕への罰なんだって。
覚悟してた。

その時……

｢フロイド……っ！……ダメですよ。僕は生きてます…｣

｢ジェイド！？だって、こいつジェイドを傷つけたんだよ！？｣

タコの人魚に支えられ、ウツボの片割れは、もう1匹の片割れを説得していた。

｢元はと言えば……僕達がこの方を"シロイルカ"と、間違えてしまった……。そうでなければ、この方を怒らせずに…一緒に……遊べたはずですよ？｣

その言葉に耳を疑った。

今まで、間違えたからと、訂正しようとしたものは誰一人居ない。
皆恐れをなして、逃げてくだけで……

『……っ！ゲホッゲホッ……』

ウツボの拘束が緩くなり、一気に酸素が入りむせる。

僕を締めていたウツボは、傷を負ったウツボと支えているタコの元へ

｢その方は、ご自分はシャチの人魚だと仰っていました。……色は真反対のようですがね……｣

｢ジェイド！！大丈夫？喋っちゃダメだよ！｣

未だに、真っ赤な液体が漂っていて、僕は咄嗟に助けなくちゃって思った。

知らぬうちに、僕は傷を負ったウツボに近づき、助けて欲しいと。このウツボを治して欲しいと。

心の底から願った。

その瞬間、パッと辺りが明るくなり、脇腹には激痛が。
そして、身体のだるさと、体の熱さ、息苦しくなる感覚。
意識が薄れていく中で、傷の負ったウツボの脇腹には何事もなかったかのように、傷が消えていたのが見えた。