何度でも (ページ4)

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栗毛の少女はハーマイオニー・グレンジャーというらしい。
同室となった彼女はどうやら真面目な性格なようで、就寝前にも教科書の内容を予習していた。

「…ねえ、ハーマイオニー」

「…なあに」

「私、魔法界のこと全然知らなくて。それで、教えてほしいことがあるんだけど」

この時、ハーマイオニーがマグル出身であることなど、Aは知らなかった。それでも、勤勉で物知りな彼女は首を縦に振ってくれた。

「ハリー・ポッターって、なんで有名なの」

ハーマイオニーは、「まさかあなた知らないの？」とでも言いたげだったが、大人しく1冊の本を開いて見せた。

「『二十世紀の魔法大事件』よ。見て、ここ」

ハーマイオニーが指差した所をたどり、Aはその文章を音読する。

「──ハリー・ポッターは、"例のあの人"の攻撃から唯一生き残った男の子…？」

「ハリーのご両親は例のあの人から攻撃を受けて、亡くなっているのよ。でも、ハリーだけは死の呪文を放たれたのに、生き残った。だから生き残った男の子なの」

ハリーの両親が、亡くなっている。

どう考えても、ハリーの父親はジェームズで、母親はリリーだった。
見た目はジェームズそっくりで、目の色はリリーと同じ。旧友に似たこの少年は、確かに2人の子供だ。

…つまり。

「…ハーマイオニー、ありがとう。先に寝るね。おやすみなさい」

彼女からの「おやすみなさい」を背に受け、毛布を深くかぶる。
瞬間、目が熱くなって、視界がゆがんだ。

自分が死んでしまったのだと気が付いたとき、Aに悲しいという感情はなかった。

もちろん、未練はあったし、もっとやりたいことがあった。それでも、「ああ、そっか。それが私の運命なんだ」と、すんなりと受け入れることができたのだ。

だから、2人が亡くなったことを知った今、まさかこんな風に涙を流すとは思っていなかった。
それほど、Aは2人が大好きだった。

2人も、みんなも、こんな風に思ってくれたのかな。