人魚姫に貢いで良いですか？【太宰治】

36：このままじゃうたかたに… ページ36

帰宅して、今日はカニクリームコロッケを作ってあげようと準備していると、いつもと違って静かな音がした。



「おかえりなさい治さん…治さん…？」



顔には包帯は無かった。けど、何か決意した様にも見えて…私の好きな治さんはいなかった。知ってる治さんもいなかった。



「あのぉ…。」

「あぁ、なんだいAちゃん。」

「ホントに…治さん…ですか？」

「私だよ？」




いなくならないよね？約束…しましたもんね…治さん…。




「今日は何を作ってくれてるんだい？」

「あ、えっと…カニクリームコロッケ…です。」

「カニクリームコロッケ！！私の好きなカニをまた使って作ってくれたんだね！！」

「はい！！」



アレ？気のせい？もしかして包帯は外れたのかなぁ…？きっとそうだね。




「ありがとうAちゃん！！」

「今揚げる所なので待っててくださいね！！」

「もちろん！！いつまででも！！」



けど…治さんが変なことには変わりなかった。ねぇ…なんで私の知らない…治さんになったんですか？治さん…ホントにどこにも行きませんよね…？私の前からいなくならないですよね…？消えちゃわないですよね…？


怖くて…不安で…ホントにいなくなって、消えちゃいそうで…。




「とても美味しいよ！！はぁー幸せ！！」

「ありがとうございます…。」





治さんが治さんじゃなくなってしまうのに、戸惑いと不安が襲うのは何で？

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