赤眼少女とマフィア (ページ29)

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【A目線】

ようやく涙が止まり嗚咽もなくなった頃におそ松は言った。

「落ち着いたか？」

「うん、ありがとう。……でもまだ怖い…」

「大丈夫だよ紅音。俺達がついてるから。な？」

そう言って柔らかく笑いかけるおそ松。

その優しい笑顔に何度励まされたことだろうか。いつの間にか体の震えはなくなり、しっかり地に足をつけて立っていられる。

そしてようやく東郷が口を開いた。

「感動のシーンは終わったか？まだお前には思い出してほしいことがいっぱいあるんだが……」

「そうはさせないぞ、東郷。紅音は俺たちの大切な仲間だ。これ以上紅音を傷つけるような真似は絶対にさせない」

そう言ってカラ松は私の前にすっと出てきた。

「お前に用はないんだよなぁカラ松。俺が用のある奴は奥沢とおそ松なんだよ。邪魔者はさっさと消えろよ」

恐ろしいほどの威圧感を込めたトーンでそういった直後にパチンと指を鳴らした途端、恐ろしい量の敵が周りに出てきた。

「んなっ……！こんなにいたのか！」

「……俺でも…気配感じなかった」

「ヤバいね！どうすんの！」

「どうするも何も戦うしかないでしょ十四松兄さん！行くよ！」

そう言って乱闘が始まった。

しかし、5人で太刀打ちできる量の敵ではない。明らかに人手不足。

いくらマフィア界でも有名な松のファミリーでもさすがに無理があり、あっけなく5人は床に押さえつけられた。

「おやおや、あんなに息巻いてたくせにもう終わりか？短かったなぁ…………それで、だ。奥沢、お前はまだ思い出したくないのか？このままだとお前らの仲間、全員死ぬぞ？それか、おそ松にさっきの薬を投与しておそ松を犠牲にするか？」

ｰｰｰｰ死ぬ。その言葉の重みで嘘を言ってるようには感じない。

実際そうだ。押さえつけられた5人は首元に刃物を当てられている。きっと東郷が指示した瞬間に刃物で頸動脈を傷つけられ、間違いなく死ぬ。

「ｰｰｰｰ思い出せない。まだ、なにか、忘れている気がするのに…思い出せない。」

自分の無力さを痛感し俯きながら自白する。

その言葉を聞いて東郷は長いため息を吐いた。

「どうせそうだと思ったよ。ったく、しょうがねぇなぁ。特別に俺の優しさに免じて喋ってやるよ。」

そう言って不敵な笑みを浮かべながら東郷は話し始めた。