赤眼少女とマフィア (ページ28)

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【チョロ松目線】

紅音ちゃんの本名が分かってからのこと。

おそ松兄さんはまだ震えているがだいぶ落ち着いたようで僕らと一緒に紅音ちゃんーーーいやAちゃんの様子を伺っている。

東郷はAちゃんに集中していて周りが見えていない。そのすきを狙って十四松とカラ松兄さんにバレずに檻を壊すように指示をした。

2人は指示の通りほとんど音を立てずに檻を壊した。

僕の隣に座っているトド松は「奥沢…？どこかで……」と思い当たる節があるようで考え込み、一松は2人が壊したところから仮面の男を音を立てずに殺した。

状況はこっちが優勢。それぞれ、いつでも戦えるようだ。

そこで急展開が。東郷が何かしらの薬品が入った注射をAちゃんに注入しようとしていた。

「まずい...っ！逃げろ！！」

薬品が危険だとわかっていたのだろう。そんなカラ松兄さんの声も届かず薬品は彼女の体の中に入っていった。

「あ……ああ...やだやだやだあああああああああああああああ！！！！……ちっ...違う……私は...私はやってない...私は悪くない...ぅああああああああ！！！」

途端にAちゃんはうずくまると叫び出した。忘れたかった思い出がフラッシュバックして雪崩のように出てくるのだろう。

「っ……紅音！！」

「あっ…バカ！おい！おそ松兄さん！」

まだまともに戦えないクセに真っ先に出ていったのは俺らのボスであり長男のおそ松兄さん。

僕達より早く駆け寄ったおそ松兄さんはAちゃんの必死に肩を揺すって声をかけ続けている。

「紅音！紅音しっかりしろ！！落ち着け！」

「違う……違う！私は...やってない……殺してない！！嫌だ...嫌だ！ああああああっ！！！」

「紅音！！！大丈夫だから！...っああもう！」

そう言うとおそ松兄さんはAちゃんのことを抱きしめた。

叫んでいた声が止まり、しばらくすると彼女の正気が戻った。

「あ……おそ...ま...つ？」

「そうおそ松。大丈夫か？」

「あ、違う、わた、私、やって、やってない」

「分かった分かった。」

涙と嗚咽の混じった声で必死に否定する彼女を、おそ松兄さんはずっと優しいリズムで彼女の頭を撫でていた。

その様子を面白そうに眺める東郷は特に何もしてくる様子はなく、僕達が檻を壊すのをわかっていたかのような素振りだった。