天使の幌歌 (ページ14)

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第11話「四つ葉の実力」ページ14

全員が、何言ってんだコイツ、という顔をした。
Aはそれを知ってか知らずか報告してきた側近のほうに視線をやる。

「東の国境の、どの辺？」
「えっ…アーリア村のすぐ傍……です」

アーリア村はクローバー王国の北東に位置する小さな村だった。

彼女はそれを聞くと5秒ほど目を閉じてからまた開けた。何をしたのわからない。魔の流れも、ヤミだけにわかる氣も、何一つ変化がないのだ。
よくわかっていない団長達や魔法帝を尻目に、Aは言われた通り魔導書を開いてあるページを探す。ぱらぱらという音が止まると、指先までぴんと伸ばした右手を前につきだした。

「”闇空間魔法夜空(ナイトブルー)の洞窟"」

Aの声と同時に自分達の目の前に大きな穴ができる。団長達は、ただただ驚くことしかできなかった。ユリウスだけが目を輝かせて、幼子のようにAを質問攻めにする。はたから見たら単なる少女とそれに言い寄る変質者というところだろう。Aはもう慣れたのか、淡々と空間の説明をする。

「これは俺の闇で空間を歪ませて穴を作る。ただ本物の空間魔法じゃないから、瞬時に移動できるわけではない。目的地に着くのに最大3秒は要する」

俺が最近使いはじめた移動方法。とAは言った。

最近使いはじめた魔法とは思えないのだが、と、誰もが思った。魔導書を使っているとはいえ、ここにいる人数が余裕で入れる移動空間など空間魔法が本職の魔導士でさえ物凄く難しいのだ。多大な魔と、精密に点と点を繋げるコントロールが、通常の倍以上必要となる。

四つ葉は伊達じゃないということか。

「…通るなら、はやく」

不安そうな声を発するA。空間魔法をガン見する団長達というその光景はあまりにもシュールだった。