第70話『エンターキー』 ページ45
杏奈side
「おい、今日中にマジで何とかしないと、」
金曜日、若武くんが切羽詰まった声を上げる。
「テスト、明日だぜ!」
みんな、鬼気迫る表情で、目の色を変えて取り組んだ。
私は一日中手伝いをするために、勉強会でお泊まりすると言って親に許可を貰ったので、今日は七鬼くんの家に泊まることが出来る。
彩ちゃんも泊まりたそうだったけど、そういうわけにもいかず、小塚くんに送ってもらい帰って行った。
私はみんなと一緒に必死に作業をする。
絶対に今日中に完遂させる。
その思いで作業に取り組むが、気づいた時には、全国統一学力測定テスト当日の朝が来ていた。
みんなは焦りを感じながらも、限界に近い状態だったので、睡魔と戦いながら、朦朧とした意識の中作業進める。
私はみんなほど疲れていなかったので頑張って取り組んだが、4時くらいを過ぎると、私もさすがに限界が来る。
意識を手放しそうになるたび、私は自分の舌を噛み、痛みで何とか目を覚ました。
だけどそれも限界があり、私は気づいたら意識を手放していた。
しばらくして、七鬼くんの声で目を覚ます。
いつの間にか彩ちゃんが来ていて、私は慌てて身を起こした。
「完っ遂!」
パソコンの前にいた七鬼くんが勢いよく立ち上がる。
「無力化した!」
隣で上杉くんと黒木くんが、朦朧とした目をまたたかせる。
床に倒れていた翼や小塚くんも、むっくりと体を起こした。
「あとは実行を押すだけだ。それで無力化が完成する」
お茶を配っていた若武くんが、咄嗟に声を上げた。
「よし、ご苦労!それは俺がやる」
皆は一瞬、顔を見合せたけれど、誰も反対しなかった。
「これは世紀の一瞬だ。全員、こっちに集まれ。俺たちKZがサイバー攻撃を阻止し、秀明を守るその瞬間を、みんなよく見ておけよ」
私たちは、神妙な顔で机の周りに集合した。
「エンターキーでいいのか」
若武くんが聞き、七鬼くんが頷く。
「よし、いくぞ」
若武くんがそう言い、手を伸ばしたまさにその時、上杉くんが天井を指さした。
「あれ、何だ?」
みんなが視線を上げる。
その隙をついて、上杉くんが七鬼くんの手を掴み、エンターキーを押させた。
若武くんの怒声が響く。
「上杉、きさまっ!」
上杉くんは、静かに眉を上げた。
「当然だろ」
壁に埋め込まれたいくつものディスプレイが、目まぐるしくまたたく。
私は、感動しながらその光景を見つめていた。
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?かなかな - よろしくお願いします!澪さん!美門くんは誰がみてもかっこいい(笑)確かにかも😊外見だけじゃなくて、中身もいいもん!美門くんはまわりに気を配ったりもしてるからさらにね。なんか、あったことあるみたいになってる(笑) (2021年10月26日 19時) (レス) id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - ?かなかなさん» 名前の読み方は「みお」です!美門はもう誰が見てもかっこいいので私もすごく好きです笑 (2021年10月24日 11時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
?かなかな - 凄い!見てみたら、お話増えていたし、澪さんから、お返事きてた!ちなみにこの『澪』って、どう読むんですか?「みお」とかですかね?それにしても、澪さんも美門君好きですかぁ〜。やっぱり人気な方ですね。美門君。私は、どっちかというと美門君の考え方に憧れてる? (2021年10月24日 10時) (レス) @page41 id: d59fc0899f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとう!今回は恋愛の絡みいっぱいにしてみました!喜んでもらえて嬉しいです! (2021年10月23日 12時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 澪ちゃんんんんん!最高、神レベルの最高!!!!!きゅんきゅんだよお!!最近いっぱい更新してくれてありがとう!!楽しみにしてますっ!!!!! (2021年10月23日 10時) (レス) @page41 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年7月6日 22時