笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】

第66話『会議』 ページ19

杏奈side


「では、会議を進める」

若武くんが声をはりあげた。

「昨日から今日にかけての、諸君の活動の報告を聞こう」

彩ちゃんがさっと手を上げる。

「私、さっき、あの男を見かけた」

みんなの顔が、さっと緊張する。

「品のいい中年紳士と一緒に、このエレベーターから降りてきた」

彩ちゃんは、その二人の会話や、レストラン街にある『東都倶楽部』のことを話した。

すると、黒木くんがスマホを出し、長い指でスルッとなぞって、その画面を彩ちゃんに見せた。

「その中年紳士って、もしかして、この人？」

「そう、この人」

黒木くん、もう手がかりを見つけてるのかな。

「誰だよ、そいつ」

若武くんに聞かれて、黒木くんは、スマホをみんなに回した。

「このビルの施工を請け負った大々陸建設の社長、加藤雅也。会社のホームページのトップにあったから、データを引っ張っといたんだ。ここの庭に何かがあるとすれば、大々陸建設が絡んでいる可能性が大きい。調べていけば、社の大物が出てくるんじゃないかと思ってさ」

おお、すごい。

大当たりだ。

「昨日の夜、この近辺の造園業者をあたってみた。この庭を作った業者を調べようとしたわけ。ところが、ここのビルに関しては造園まで大々陸建設内部の造園部が手がけたって話だった。で、その大々陸建設の本社なんだけど、どこにあると思う？」

私たちが顔を見合わせていると、黒木くんは不敵な笑みを浮かべた。

「M県だよ」

小塚くんが声を上げる。

「それって、フタトゲチマダニで、一番多く患者を出している県だよ」

そうなんだ。

「たぶん、この空中庭園の土や草は、M県から運んだんだ。フタトゲチマダニと一緒にね」

「造園に関わった作業員なんかは、マダニにかまれなかったわけ？」

上杉くんが聞くと、小塚くんはちょっと首を傾げた。

「工事の作業員は、手袋とかしてて完全武装だからね。ウィルスを持っているマダニを避けるためには、肌を露出しないことだって言われてるくらいだし。中には、かまれた人もいるかもしれないけれど、普通の病院に行っても診断できないよ。ウィルスは細菌よりも小さくて、検出が難しいんだ。高熱とかの症状も、他の病気と共通してるしね。原因不明のまま処理されてるケースが多いんじゃないのかな」

やだな。

「話を戻そう」

若武くんが私たちを見回した。

「黒木先生の報告が中断している。続きをどうぞ」

あ、そうでした。

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