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三十八日目 ページ38

『私の友達が辞めてほしいって言ってるの。辞めてもらえないかな?』

Aの目の前にいる女子生徒は灰色の瞳をAへと向けた。

「...わた、しは、死んでなんか、いないのよ...なんで、みんな...わたしを、いじめるの?

なん、で、席がない、の...?」

ぶつぶつと呟く女子生徒。

瞳からは涙がぼろぼろとあふれでていた。

「ひと、りは...嫌なの」

Aはふぅ、とため息をついて『天国にいけば楽なのに』と呟いた。

それを聞いた瞬間、目の色を変える女子生徒。

「わたし、の、ことを...なにも、知らないくせに...!」

『知らないよ。知ろうとも思わない。残念ね

貴方は死んでいるの。誰も気付いてくれないし、誰も貴方を知ることがないでしょうね』

Aは冷静に返す。

しかし、頭に血が登った女子生徒は「うるさい!」と金切り声をあげた。

「私は、死んでいないのよ!」

『死んでいるんだよ。だから、そうして悲しんでいるのでしょう?』

Aの言葉に女子生徒は大きく反応した。

先程の怒り顔が嘘のように怯えた瞳でAを見る。

『死んでないって思っているのなら、なんで悲しむの?

なんで家に帰らないの?

なんで親は探してくれないの?』

幼い子供が疑問をそのまま口に出すようにポロポロとこぼれていく疑問。

その疑問一つ一つが女子生徒の心にキツくしまった鎖を解いていく。

なんで悲しむ?

一人は嫌だから。

なんで家に帰らないの?

帰らないんじゃない。帰れないの。

なんで両親は探してくれないの?

それは...

それは、私がいないから。探す意味がないから。

ようやく自身が死んだのだと受け入れた様子の幽霊。

体が世界にバグが起きたようにズレては砂粒のように消えていく。

「...ぁり、がとう」

今度は幸せそうな涙を流しながら微笑む女子生徒。

『うん、おやすみ。ゆっくりお眠り』

Aの優しい、聖母のようなゆったりとした声色に安心したように女子生徒は目を閉じた。

その時ばかりは、コネシマやロボロの目にも綺麗な女子生徒が写っていた。

数分後、何事もなかったかのように静寂が訪れる。

「...なんやったんやろうな」

コネシマのポツリと呟いた言葉が空間を震わす。

ロボロは何も言わずに夜空へと目を向けた。

一方、Aは二人と見えたものの違いに疑問を抱き不思議そうにその現場を眺めていた。

...あの子、生前は多分__

それが事実なら、この子たちは...

Aは奥が深いな、と思いながらもその場で別れた。

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作者名:咲々姫 | 作成日時:2021年2月2日 16時

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