僕の声、君を救うため。【あほの坂田】 (ページ2)

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「あ、Aいたぁ！一緒に帰ろ！」

『…うん。良いよ。』

何度そこで、「断れ」と強く思うか。

俺に歌を求めるなら、断れよと。でも、それがAなりのSOSだと分かってる。

けど、何もできないのが俺。女子の事情なんて、分かりやしない。
下手に口を出せば、俺はそこで終わりだ。

………Aを救いたいのに。

だから俺は黙って、知らないフリをして、ただただAの希望に沿って歌うだけ。

家に帰るともうAはいて、「いつもごめんね。歌って」と言う。

坂田「迷惑なんかじゃないって。いつでも歌ってあげるって言ってるやん」

『うっそだーw』

ちょっとカッコつけて言ってみる。

Aは笑う。偽りの笑いで。
俺の前までもその笑いとか、ちょっとショックだな。

坂田「～～～♪」

俺が静かに歌い出すと、ふんわりと笑って、「ありがとう」と。

その素で笑った顔を、俺は見たかった。

『優の声、大好きなんだ。また、歌ってね。もっと沢山の人達に聞いてほしいな～』

坂田「俺に歌手なれってか？そんな難題押し付けんなよーww」

『ふふっ。そんな事、言わない。私は優の歌声を独り占めしてたいから。』

坂田「…そんな恥ずかしい事言うなっ」

『あ！照れてる～。ふはっ！恥ずかしい事ちゃうやん？んふふ。』

俺の前だけで良いから、本当の笑った顔を見せて。