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1.甘い茶菓子と誘惑 ページ1

「あの、すみません!どなたか居ませんか〜!」


雨がコンクリートに打ち付けられて、ザアザアと激しい音を鳴らす。
大きな洋館の扉を叩くが、中からの返答はない。


「A〜!今度ここでハロウィンパーティーあるらしいの!仮装もメイクも自由!行くしかないよね!?」


友人がイベントチラシを指さしてそう言っていたのでその場所に来たは良いものの。
辺りに友人の姿も見つからなければ、この館に人が住んでいるのかどうかすらも怪しい。

やけに辺りは暗いし、何だか現実離れしていて不気味であった。
広すぎるぐらいの庭と、美しく整えられた薔薇園。
庭の中央には立派な噴水が備え付けられており、ここが日本だなんて信じられない。
この館の周りの敷居など、一般人の私には想像すらできなかった。


「………無理、怖い…」


足が竦んでしまいそうな程に不気味なこの場所にいつまでも居られるほど、私の肝は座っていない。
不躾なのを理解しつつも、洋館の扉を開く。

ギィという木が軋む音を予想していたが、そんなことは全然なく、真新しいままの扉が静かに開かれた。


「あの、入りますよ…!失礼します!」


勝手に人様の館に上がり込んで、そうして発した第一声がこれだなんて私の両親がどう責められてもおかしくはないが、今はそんな事を考える余裕はなかった。
怖い。とにかく怖い。
産まれてから今までビビりだ、だなんて散々言われてきたのだから仕方が無い。

ハロウィンパーティーなんて来るんじゃなかった。
格好が格好でこんな場所に迷って、一人怖がってるなんて滑稽すぎる。


「誰か居ませんか!?」


大きい声を出したのは久しぶりだ。
館の中は想像通り、と言った所だ。
中央には赤いカーペットが敷かれており、それがそのまま伸びて行った先には大きな階段が立派に上へと伸びていた。

広すぎるあまり、私の大声が反響して返ってくる。


「誰も…居ない?」


念押しのようにそう呟きながら、少しずつ歩みを進める。

どうすればいいのか分からず、けれど私の好奇心はただ膨れ上がるばかりで。

人間は好奇心に弱い。
一度興味を持って、好奇心が出てきた暁にはそれに逆らわない。


「よっ。お腹減ってない?」

「っ、ひィッ!?」


階段を登った所で、突然背後から肩を叩かれたので私の心臓は大きく跳ね上がった。
喉からは轢き殺された蛙のような声が出て、相手の男性を驚かせてしまったようだ。


「甘いもの、食わねぇ?」


おばけの形をしたキャンディをチロリと舐めた舌は真っ赤だった。

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ちょこ - 終わってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます! (2021年6月8日 18時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 皇咲鈴音さん» びっくりしました誰かと思いました笑 みかんさんありがとうございます!本当嬉しいです大好きです(;;) (2020年10月28日 23時) (レス) id: 9beb0497a0 (このIDを非表示/違反報告)
皇咲鈴音(プロフ) - すごい名前になってますがTwitterのみかんです( めっちゃめっちゃ内容好きです!! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 72e21fad30 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃ(プロフ) - 物語の構成が好みすぎました!!更新おまちしております!!! (2020年3月27日 16時) (レス) id: c45d7c6a24 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - nanaseさん» そのように言って頂き嬉しいです…!コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2020年3月8日 6時) (レス) id: 7dc015f2ad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:もう既に血が足りない  
作成日時:2019年10月19日 15時

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