染明－secret romance－♭2《ars/s.s》 (ページ14)

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たぶん、お酒のせいだ。

社長が私に踏み込んだ質問をしたのも。

私が、躊躇うことなくそれに応えるのも。

「それこそ、無償の愛ってやつじゃないの。見つからなくてもずっと探し続けて、待ち続けて、なんてさ」

社長が不意に言ってグラスを煽った。

ごくごくと飲み干す喉の音が私の耳にも聞こえてくる。

「無償の愛？」

聞き返した私に社長が目線だけを向ける。

最後の一口を飲んで息を吐くと、ボトルに手を伸ばしながら口を開く。

「損だとか得だとかじゃなくて、気持ちで動くもの。……君にメリットないでしょ、そうやって探してるの」

「それは、そうなんですけど……」

「前に話したじゃない。そういうのを無償の愛って言うんじゃないかって。夫婦ってそういうものなんじゃないかって」

あぁ、そういえば。

そんな話をしたことがある。

私は一般論を言ったつもりだったけど、もしかして社長は私のこととして聞いていたのだろうか。

そう言う感情には、近しいものには覚えがあると私が言ったから。

「そうなんでしょうか、自分ではよくわかりません」

私は考えながら口を開く。

「というか、ずっと、よくわかってないんです。あの人への気持ちが何だったのかも、あの人との関係が何だったのかも」

「彼氏だったわけじゃないの？」

「それは違います。明確に、違うんですけど……」

違うのだけれど。

じゃあなんだったのかと言うと、それが一番近い表現であるのは確かで。

「……好きだった、ってわけでもないの？」

「一緒にいたいと思ってました。一緒に生きていくつもりでした。私の世界のすべてでした。……それを、恋と呼ぶでしょうか」

「さあ、残念ながら俺にはわかんないかな。前にも言ったけど、俺にまともな恋愛経験はないからね。ギブアンドテイクな関係でよければいくつか心当たりあるけど」

社長は冗談めかして笑った。

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