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「……。」

沖 「今度は暴れねぇのか、忙しいやつだな。」

ゆっくりをまぶたを開き、天井を見つめる彼女を俺は覗き込んだ。暴れてから2時間くらい経っていただろうか。

今度目を覚ました彼女は妙に落ち着き、だが、ここがどこで、なぜ自分がここにいるのかよくわかっていないようだった。

「…あ、なたは…。」

彼女の第一声はそれだった。俺の赤い目をじっと見つめ、それだけいった。やはり、先ほど暴れたことは全く覚えていないらしい。

沖 「名を聞くときはまず、自分からだろぃ。」

もしかしてあれは寝ぼけていたのだろうか、なんて思えばなんてめんどくさいんだと俺は思ったが、彼女の名前を聞いておくのにもちょうど良いと思い、そう訊ね返した。

彼女は困った顔をして、うつむいた。まさか名前がなんてことはないだろうと思ったが、彼女は案の定、「名は…ない。」と呟いた。

沖 「名前がねぇ?そんなことはねぇ、お前さんが生まれた時につけられたはずだ。名前がねぇ奴なんて、この世には戸籍がないやつくらい…」

そう自分で言って、ハッとした。そして彼女の顔は全てを物語っていた。

沖 「戸籍がねぇのか…」

「…ごめんなさい。」

さすがに俺もびっくりした。戸籍がないやつなど、ざらにいるわけでもないし、身近にいるわけでもない。今までも職務を全うしてきた中で、戸籍がないやつと会ったことはなかった。

でもそうであるならば、彼女はどうやって生きてきたのか。

少しばかり最初は汚らしかったものの、倒れたのち、女中から綺麗に洗ってもらった後は彼女が見た目よりもそんなに幼くないことが見て取れた。

多分年は俺も同じくらいか、少し下だろう。

「私、暴れませんでしたか?」

申し訳なさそうに聞く限り、自分がそうなってしまったことが記憶にないものの、やってしまった可能性があると自覚があるのだろう。

ほんの少し俺は事実を話すべきがまよったが、「ああ。」とだけ呟いた。彼女はまた申し訳なさそうに「ごめんなさい。」と謝った。

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作者名: | 作成日時:2017年1月16日 1時

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