CRUSH × BUZZED × CRAZY ！？Ⅱ【utit】 (ページ35)

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「ナイフとフォーク逆だぞ」
「へっ」

くつくつと笑う目の前の彼。店員さんの前ではスマートな男性を演じているが、他の人がいないところでは不慣れな場所で緊張する私を見ては静かに笑っていた。失礼な。

…明らかに高級そうな、豪華な外観をあんぐりと口を開けて見ていた私を気にせずに「入るぞ」とスタスタ歩いて行った彼について行けば、それはそれは高級なメニューが並ぶレストランで。

びくびくしながら彼について行けば、常連なのか個室に通されて。手短に注文を済ませてさっさと準備している彼の見よう見まねでこの場を乗り切ろうとした私。

テーブルマナーをろくに知らない私に彼は最低限のマナーだけを伝え、恐る恐る一つ一つの動作を行う私を見て楽しんでいる。…最低限だけでも伝えてくれるのはもしかしたら優しい方なのかもしれない。

「ここ、俺の顔見知りの店だからそんなに緊張しなくていいぞ、個室だし」
「な…それを早く言ってくださいよ」

一気に肩の力が抜けた。もうナイフとフォークの使い方がどうとか気にしなくていいじゃないか。いや、それは礼儀として必要なのだけれど。

店員さん…ウエイターさんも個室だからか周りにいないし。というか、こんな高級レストランの経営者と顔見知りって、この人はどういう人なんだ。テロリストの頭脳担当研究者じゃないのか。

「なんつー顔してんの…あははっ、まだ料理来るから早く食べてよ」

目の前の彼を疑う目で見ていたら、それが面白かったのか。彼はいつもの、何かを企んでいるような笑い方とは違う晴れやかな笑みを浮かべた。

珍しいものを見た。が、私の醜態を見て笑うのはやめて欲しい。少しだけ恥ずかしいような、こそばゆいような気がするから。

何だか笑っているうらたさんを見ていたら落ち着いてきた。緊張すると料理の味が分からなくなって、何を食べているかわからない状態になるとは言うが。

本当に味覚が機能していなかったけれど、段々落ち着くと味が分かるようになってきた。…高級なものを高級なものだとはっきり判断できる肥えた舌を持っている自信は無いが、これはとても──

「…美味しい、ですね」
「……ん、当然。ふふ」

その笑みは私の『美味しい』という言葉から来るのか、それとも先程から引き続いて私の変な顔を見て笑っているのか。疑問を持ちながら、最初に指摘されたフォークで美味な料理を口に運んだ。