悪魔の笑みで微笑もう【赤司征十郎】

悪魔⇒１９ ページ20

.


昔っから演じるのは得意だった。


幼少の頃、両親が仕事でいない日は泣き喚いていた。寂しくて、寂しくて、傍に居てほしいと何度も願った。お正月の願い事も、クリスマスプレゼントも、誕生日プレゼントも。

両親が居てくれればそれでよかった。


今思えばそれだけをただ願っていたなんて、私にも純粋な時期があったんだな。程度にしか思わない。

明くる日、父が死んだ。
詳細は今としては全く覚えていないが、職業柄仕方の無いことだと言って割り切って虚勢を張っていた母の姿は今でも鮮明に思い出せる。

なんて醜いんだろうと思っていた。
そう、思うだけだった。


欠落。
私は感情が欠落しているらしい。

喜怒哀楽でいえば哀の部分が欠落しているのだろうか。まぁ、日常生活に支障はないから気にしないが

何時かの標的(ターゲット)に言われた言葉なのにここまで気にする必要なんてないのに。

それなのに如何して此処まで気にするのか。


「A？」
「…嗚呼、御免ね。大輝。ちょっと考え事してた」



いけない。まずは目の前の彼を説得することに専念しないと。

悪魔⇒２０→←少年⇒１８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す