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【枯れた薔薇】
『……っ、トム！！』
廊下に大声が響く。肩を震わせ、トムは後ろに振り向いた。そこには走ってきたのか荒い息を吐いて、不安げに揺れる瞳をしたAの姿。
こんなに狼狽える彼女の姿は初めてで慌てて駆け寄ろうとするが、それより先にAの方が駆け寄ってくる。黒いリボンが後ろになびく。
「どうしたんだ、何かあったのか?」
『あの、あのね……』
視線をさ迷わせ、必死に言うべき言葉を探している。先程の大声のせいか、辺りに居た生徒の注目を浴びているせいで居心地は最悪だ。
「A、場所を変えよう」
有無を言わさず、手を引いて空き教室に入る。扉を閉めてから彼女の方に向き直った。相変わらずAの表情は不安に溢れている。
誰かに何か言われたのだろうか。それにしてはトムの反応を伺うような態度。まさか、裏でやっていることがバレたのだろうか。
やがて言うことがまとまったのか、Aは深呼吸をすると真っ直ぐにトムを見つめた。美しい深紅。その危うい美しさに魅了される。
『ねぇ、トム。もしかして私、貴方にとってとても嫌なことをしてた?』
「は?」
『アルフォードから聞いたの。貴方、名前で呼ばれるのが嫌いだって。彼も直接聞いたわけではないんだろうけれど』
「……ちょっと待ってくれないかな。アルフォードだって?アルフォードってアルフォード・ブラック?」
『……?えぇ、そうよ』
彼女と仲が良かったのも以外だが、それよりもそんなに顔に出ていたのだろうか。自分の演技の甘さに苛つき、思わず唇を噛んだ。
『そ、それよりも!!』
「君が僕の名前を呼ぶことが嫌だったのかって?……そんなことはないよ」
『で、でも』
「確かに僕は自分の名前が大嫌いだ。理由はいくつかあるが……、とにかく呼ばれるのは好きじゃない。ひどく不快になる」
Aの顔が強ばる。左手で右拳を握り、うつ向く。そんな顔をしてほしいわけではないんだ、とトムは少しばかりの罪悪感に眉を下げた。
「君に、Aに名前を呼ばれるのは嫌じゃない。……嫌じゃないさ」
『……本当に?』
「嘘なんてついてどうにかなる話じゃないだろ」
『なら、これからもトムって呼んでいい?』
「勿論だよ」
良かったと微笑む彼女。本当にAに名前を呼ばれるのは嫌ではない。むしろ、そこで慌てて考えるのを止める。何がむしろだ。
きっとAが自分にとっての特別な存在だからだ。すとん、と心の中に違和感なく入ってきた彼女が。そうに決まっている。
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あまね(プロフ) - ヴァンパイア⁉️めちゃ好きです🫶 (9月9日 21時) (
レス) @page32 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
くりきんとん - 主人公の秘密だったりリドルの独占欲がじわじわと感じられる描写など、すごく面白いです！文章も細かく書かれているため内容が薄すぎなくてスラスラ読みやすかったです！更新大変かと思いますが頑張ってください！続き楽しみにしています！ (2022年3月20日 15時) (レス) id: aa56424b90 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - つづきが気になります！ (2022年3月20日 0時) (レス) @page28 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - トム・リドル大好きなんです！更新楽しみにしてます！頑張ってください！ (2021年6月12日 1時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2021年6月5日 17時
