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side 治
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インターハイが終わって、ちょっと長めの、お盆の2日前から始まるお盆休みに入った。
インターハイお疲れ様でした も兼ねて、今日はバレー部で海辺でバーベキューをすることになっている。
俺はこの日が楽しみで仕方なかった。
だって大好きな人と大好きな飯が好きなだけ食べられるからな。
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高校に入学して少し経った頃のこと。
「なあツム、俺ってドMなんかな」
部活が終わって帰宅し、風呂とご飯を済ませて部屋でのんびりしていたとき、ふと口にした。
「はぁ?ドMはブタ言われたら喜ぶやろ」
「ほなちゃうなあ」
俺はブタ言われたらムカつくしな。
急に何やねん気持ち悪いな、とブツブツ言うツムを無視してベットに横になる。
「なあツム」
「今度はなんやねん」
「ツムって南さんと仲ええよな」
「はあ?アレがええように見えるんか?眼科行ってこいアホが」
いつもなら、そこまで言わんでええやろクソが、と喧嘩になるところだが、何となくそんな気分にならなかった。
「お前さっきからほんま何言うてんの?」
噛みつかない俺を不思議に思ったのか、そう言うツムを「別になんもあらへん」と適当にあしらう。
自分でもちょっとおかしいと思う。
「どつくぞ侑!」
「はよせい侑しばくぞ」
「侑ええ加減にせえよアホが!」
「はっ倒すぞ侑お前!」
南さんの罵倒にしては豊富なボキャブラリーが南さんの声で脳内に再生される。
やっぱりおかしいな、侑が羨ましいとか。
ただ罵倒されとるだけやで。
そやのに、俺は南さんが気になって仕方なかった。
俺も言われてみたい、というか、構われたい、というか、多分侑に嫉妬してる。
そうか、これが人のこと好きになるってことなんや。
そうや、たぶんそう。
初めての気持ちやなぁ、と思ってからもう一年以上経つ。
今もずっとその気持ちは変わらへん。
後にも先にも南さんだけや。
でも別に付き合いたいとかそんなんはない。
だって見てたらわかるし、南さんが北さん好きなんとか。
それに、北さんから南さんのこと奪おうやなんて、到底思えへん。
俺はこのままでいい。
バーベキューに行くのに侑が用意し終えるのを待ちながら、ぼーっと考える。
このままでいいねん。
そんで、南さんが卒業しはるくらいに、ちょっと気持ち伝えれたら、それで十分やなあ。
手の中にあるスマホの画面に映る北さんと南さんが隣合うバレー部の集合写真を見てそう思った。
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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
依(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時