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side 侑
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俺がサムのことを待たすのは珍しくないけど、サムは珍しく怒りもせずに、ただ「はよ行こ」といつもより楽しそうで子供みたいやと思った。
海に着いたら、北さんとアランくんがもういて、俺らと同じくらいに赤木さんと南さんが来た。
ショートパンツに白いTシャツ姿の南さんは、当たり前やけど見慣れんかった。
ようみたら、いつもより唇が赤くて、目がキラキラしてて、ちゃんと女子やな、て思った。
隣におるサムも顔を赤くして見惚れて、って、え?
少し驚いて2度見したら、サムはもうアランくんといつも通りに話してた。
ドッと心臓が嫌な音を立てる。
やめえやほんま、焦らすな。
とサムを心の目で睨んだ。
それからぼちぼち人が集まって、後で交代しよう、とバーベキューの用意をする組とビーチバレーをする組に別れた。
「私は用意してるで、みんな遊んでき」
サムが南さんに行こう、と言うと南さんはそう言った。
なんや今日は南さんも柔らかい。
俺は先にみんなと遊んでたから、しばらくして南さんに「俺代わりますよ」て言うたら、
「ほんまにええんやて」とちょっと怒られた。
俺は怒られるんかい。
内心ツッコんだ。
「なに侑、フラれてんの?」
「角名……」
少し肩を落として戻った俺には角名がニヤニヤしながら言ってきた。
「別にそんなんやない」
言いながら南さんの方を見た。
普段アランくんが横にいるとわからんくなるけど、北さんも南さんの横にいたら背高いな、とかなんやお似合いやなあ、とか南さんなんでこっち来はらんのやろ、とか、いくらでも言葉はでてくる。
口にしたのは一つだけ。
「なあ角名。何で南さんこっち来やらんのやろ」
「……服脱ぎたくないんじゃない」
たしかに角名はむっつりスケベっぽいな。
よくそんな考えに至るわ、と尊敬さえする。
「その顔やめて。みんな水着じゃん」
「……ようみたら、透けとるな、……黒か?」
「きもちわる」
紅一点とはいえ、南さんやからなあ、という気持ちと、それでも女子の水着が拝みたい、という気持ちが交錯した。
勝ったのは後者。
「アランくーん!」
「なに侑」
「北さんと南さんにも遊んでもらおうや」
な、と押し切る俺に負けたアランくんは一緒に南さんのとこに行ってくれた。
「北さん南さん!ビーチバレーやりましょ」
「え、いいて私」
「はぁん、南さんてもしかしてぶよぶよですか?」
予想してた通り、俺の言葉に南さんは鬼のような形相になった。
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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
依(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時