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side A
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私はベンチに座って、去年のことを思い出していた。
去年の、髪を切った頃のこと。
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高校1年、冬。
今年に稲荷崎高校男子バレー部に入部して、春高にも出て、もう一年が終わろうとしていた。
帰り道にある公園のベンチに、北と2人で座った。
「もう一年終わるんやなあ」
ネックウォーマーに顔をうずめていた北が話し出すと、息が白くなった。
それくらい、寒い日だった。
「私ももう2年なるんかあ」
「せや」
「ほな後輩できるんやなあ」
「せやで」
北は相槌をうってばかりだったけど、私が
「ほな髪でも切って気合い入れよ」と言うと、ぐりんとこっちを向いて驚いた顔をしていて「え、切るん？」と言った。
予想外に大きかった反応に戸惑っていると、私が話すより先にまた北が口を開いた。
「ほんな綺麗な長い髪しとんのに」
ドキッとした。
でと北のことだから他意は無いんだろうな、と平静を装う。
「そうかあ？」
「よう似合てるで｣
北って褒め上手だったんだ、と初めて知った。
「ほんなん言われたら切りたなくなるやん」
私が言うと北は、少し考える素振りをして、
「でも短いのも見てみたいなあ」
と言った。
私は帰ってすぐに美容室を予約した。
その次の次の日。
短い髪で部活に行くと皆にすごく驚かれた。
「しっ、失恋でもしたんか」
「大耳なんちゅーこと言うねん！よう似合てるで南！」
ふざける大耳とそれにつっこむ尾白。
面白かったけど、何より頭に残っているのは北のこと。
私は恥ずかしくて、
「めっちゃ切ってしもた」
と保険をかけるように言った。
北はたしかに驚いたように目を見開いていて、キタキツネにそっくりだった。
「……ええやん」
たったそれだけの言葉でも、本心なんだろうなって思えて何より嬉しかった。
「気合いは入ったか」
「じゅーぶんや！」
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何でこんなこと思い出してるんやろ。
それだけ、北の存在が大きいてことか。
好きかどうかは知らんけど、北は私にとって精神的支柱やったんやな、と改めて思い知った。
そうか、私北が遠い人になってまうんが嫌やったんやな。
「めっちゃ子どもやん……」
少し落ち着いた所で、帰ろうと立ち上がると誰かが近寄ってきた。
「子どもは帰る時間やで」
「え、北」
「まだこんなとこおったんか」
嬉しくて、カバンを持って走るとツンっと何かに躓いた。
やばいコケる、と覚悟する。
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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (
レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
依(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます！ (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました！！最高です（ ; ; ） (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした！！ (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Rikka | 作成日時：2020年3月18日 10時
