“記憶の間” 常識、じょうしきジョウシキ… ページ3
あれからと言うもの、狂子の中で今までの実母の行動や現在の環境に疑問を
抱き悩んでいた。
端から異常でしか無い言動や行動に、狂子の中の常識は揺らぎ出していた。
それ即ち植え付けられていた偽物の思想が、壊れかけているのだ。
(…でも、どうする？間違いだって、気付いたところで…)
今の狂子に選択肢は無い。
実母達の間違いを正す力は無いのだ…それに。
『…本当に間違っているの…？』
あくまでも疑問であるが故に悩んだ。
周りは何食わぬ顔で実母の凶行を当然かの様に見過ごしているからだ。
責めたり指摘したりしている場面は一切無い。
既に取り返しの付かない行動もしているのだが、
それに関しても恐らく…罪には問われていないだろう。
彼女は愛されている、その言葉の通りに甘やかされているのだ。
(でももしこのままだったら…)
狂子は不安で仕方なかった。
今は忘れているのだろうが、過去の惨劇を目撃していた彼女は
あの時と同じく、嫌な予感がしていたのだ。
…予感は何れにせよ的中してしまったが。
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精神的に疲弊していく中で、唯一彼女が彼女としてマトモで要られたのは
趣味だった音楽と、義妹である魅姫の存在のお陰だった。
魅「姉様、今日は何を聴かせて下さるんですか？」
『今日は…そうですね、月の光Clair de Luneを弾こうかな、と。
でも未だ慣れてないのでワンコーラスしか…』
魅「…姉様は、本当に努力家ですね」
『え？そ、そうかしら？』
魅「えぇ、中学受験の際にも毎日お部屋に籠もって、勉強していましたし…
元は義母様に聴いて貰う為に練習していたのですよね？」
『…えぇ、まぁ…』
実は一回だけ、母に演奏を聴いて貰っていたのだが。
「うーん…何だか雑音にしか聞こえないわ…」
と言われ、狂子は酷く自信を無くしていた。
それでも魅姫に褒められ、感謝されれば少しは気が紛れた。
誰も聴いてくれない自分の演奏を唯一賞賛してくれる彼女の存在が、
狂子にとっての癒しだったのだろう。
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霧「この当時は未だ普通…だったのか」
ぺ「周りの奴等は異常ですけどね」
蛇「それが何であんな風に…」
ミ「ってか、狂子ちゃんの演奏を雑音だなんて…！」
来「あの人、耳まで狂ってるのね」「「同感」」
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作者名：徒花(腐女子) | 作成日時：2020年12月7日 12時
