百五十七歩目。 ページ8
―壊理side―
今日はあいざわ先生が女の人をつれて来る。
デクさんとルミリオンさんは、元気でやさしくていい人だって言ってた。
わたしは知らないけど、女の人はわたしのこと知ってて、会いたいって。
なんでかは分からないけど、きっとその人もヒーロー、だから。
はじめて会うからちょっとだけきんちょうするけど、だいじょうぶ。
コンコンッ
「！」
「エリちゃん、入っていいか？」
あいざわ先生の声。おへんじ、しなきゃ。
「は、い！」
「入るね」
ガラッ
入って来たのはあいざわ先生と、女の人。
とびらからひょこってお顔出してて、目が合うと笑いかけてくれた。
デクさんたちが言ってたとおり、やさしそうな人。
『きみがエリちゃん！かわいいね！』
「あ、ありがとう...？」
「会って早々困らせるなよ」
『いやぁ、つい思ったことが口に出ちゃって...だってホントにかわいいですもん！』
明るくて、元気な人。ルミリオンさんとにてる、かも。
ベッドの近くまで来て、目線を合わせてくれる。
『初めまして〜、遮止Aって言います！よろしくね、エリちゃん！』
「よろしく、おねがいします...えっと、しゃし、Aさん？」
『あ、そっか。なんて呼んでもらおうかな。好きな呼び方で良いんだけど...』
「緑谷と通形のことはヒーロー名で呼んでる。遮止は名前でいいんじゃないか」
『じゃあ、Aって呼んでもらおうかな！』
「Aさん...？」
『そうそう！エリちゃん良い子だね〜。そうだ、今日はねエリちゃんにプレゼントがあります！』
ぷれぜんと...？
わたしが首をかしげると、Aさんはニコッと笑って、かばんをゴソゴソし始めた。
何かをとってせなかにかくしたから、わたしは見えなかった。
『手を出してくれるかな？』って聞かれたから「うん」って手をおさらにしてAさんに向ける。
『じゃーん！りんごゼリーだよ〜』
「りんご...！」
きのう聞いたりんごあめは知らなかったけど、ゼリーは知ってる。
つめたくてぷるぷるしてるおいしいおやつ。
『ゼリーは食べたことある？』
「うん、おいしいの、」
『良かった〜！これはね、ここを開けてちゅーって吸うんだよ』
「ちゅー？」
『そうだよ。今食べてみる？』
「うん...！」
Aさんはやさしくて、明るくて、元気な人。
もらったりんごゼリーは今までたべた中でいちばんおいしかった。
ずっとニコニコで、やさしくさわってくれる。
また、会いたいなぁ。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月30日 22時
