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思わず漏れてしまった独り言のような呟きに、禄朗は耳を止め、頭を寄せてきた。おでことおでこが触れ合って、真正面から覗かれる。
「どーした?急に……なんかあった?」
「うん、あったけど、今はいいんだ」
「なによー。しゃべってみ?」
「いや」と首を振り、耳に噛みつく近さで囁いた。
「禄朗が欲しいって、ずっと思ってた」
明日美のように命を宿せないけど、彼が欲しい。体いっぱいをその熱で満たしてほしい。そう願ってしまうのは罪なのだろうか。
そして___自分の夫が知らない場所でほかの男の雄を受け止めていると知ったら、彼女はどうするのだろうか。
自分の中にこんな深い業があるなんて知らなかった。なんて欲張りで罪作りで人でなしな男なんだろう。
「ねえ」
甘えるように体をすり寄せると、欲望がともり色の変わった声で禄朗が先を促した。
「ほんとに優希はおれを誘うのが上手いよな……」
大きな手のひらが背中を撫で、腰のラインをたどった。これから楽しむ場所を指先だけでくすぐると席を立つ。
「行こうか」
「……うん」
急くように並んで店を出る。互いに待てないとばかりに体を寄せ合い先を急いだ。
仕方ないだろ、と誰にともなく優希は呟いた。だって誰よりも何よりも、禄朗が欲しいのだから。
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モノモノ(プロフ) - 花奏さん» 普通に続きますよ。この後も悲劇の連続なので、書くのが苦しいです(>_<)でも頑張って続き書いていくので、よろしくお願いします! (2021年4月12日 7時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
花奏(プロフ) - これ続きますよね、?深夜ながらに泣いてしまいました……。とっても素敵に物語が動いていて、私の心情が左右しまくっています! (2021年4月11日 23時) (レス) id: ed1d1a00c3 (このIDを非表示/違反報告)
モノモノ(プロフ) - 夜市さん» わざわざ感想ありがとうございます。情景描写の書き方は今でも尚苦戦します。亀更新になりますが、よろしくお願いします。 (2021年4月7日 22時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
夜市 - 情景描写や心情の表し方がとても繊細で、素敵な話ですね。お体に触らぬ程度に更新、頑張ってください。 (2021年4月7日 14時) (レス) id: 5befe0aadf (このIDを非表示/違反報告)
モノモノ(プロフ) - 花奏さん» 感想ありがとうございます。明日美ちゃんが可哀想になってきたけど、頑張って更新したいと思います。 (2021年3月10日 8時) (レス) id: 995658f693 (このIDを非表示/違反報告)
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