【黒バス】R【黒子テツヤ】

「呆けた夢の跡」 ページ35

あの後と言えば、普通にあの豪勢な家で一泊して、普通に豪勢な車で表参道まで送ってもらった。

家に帰る途中、胃薬買うからコンビニで降ろせと言えば運転手と黒子に何故か笑われたので、薬買った後に速攻飲んだ。

流石にもう効いてきても良いはずなのに、未だに胃はキリキリ言ってる。

薬の効果が弱いのか、私のストレスがヤバすぎるのかはわかんないけど、とりあえず次は違うとこのやつ買う。


黒子は小銭でも出すみたいに10万円をポンと渡してきたけど、別に金に困ってる訳でもないし、なんか納得行かないから断った。

なんならこっちが宿代出すべきだった気もするレベルの家だった。




で、今。

……割とデカめの撮影なのに集中し切れてないのは絶対に昨夜の出来事のせいだった。

気分的に言うと、狐につままれた感じ、というか。

白昼夢から抜け出せない感じ、というか。


あまりちゃんと寝れなかったせいか、カラーフィルムを付けたストロボの光が目に痛い。


「Aちゃん今日元気無くないっスか？」

「リョータくんとの撮影だからじゃない？」

「エッ！？そ、そんな事ないよね！？」

反対側の椅子に座って夏音さんと話してた金髪に話を振られ、「んー」とだけ返す。

昨日の今日で黄瀬の相手をしなきゃいけない私はマジで運が悪いと思う。

明日とかに宝くじ買ったら当たるかもしんない。買えねーけど。


「声ちっさ！」

「まぁ黄瀬との撮影はテンション上がんねーのはある」

「酷くないっスか！？」

「なんか吸い取られるんよね、黄瀬といると……」

「何を？」

「生気」

「生気！？」

「後輩を可愛がる心は無いんスか……」とわざとらしく涙ぐむ黄瀬に、「タメじゃん」と返していれば、大谷さんの「撮影始めまーす！」の声が響く。


「まずは黄瀬くんから！」

「ハイ！」

黄瀬は小学生か？みたいな良い返事をして白ホリに入って行った。

一々炊かれるフラッシュと大谷さんの声にあわせて、カメラの前でポーズと表情を目まぐるしく変えていく。


黄瀬はめちゃくちゃモデルに向いていると思う。

この仕事は自分の良さを理解した上で出しゃばれる人間が評価されるからナルシスト上等。

ビジュアルは勿論、性格とかセンスとかメンタルに関して黄瀬は最強だった。

私の中学の同級生で、事務所の後輩であるこいつがうちに入ってきたのは今年の春。



確認したい事があるからと事務所に呼び出されたある日、顔なじみのスタッフが連れていたのが黄瀬涼太だった。

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