「幾年か前の縁由」 ページ33
「そもそも授業サボる時に図書室使うのなんて僕くらいだと思ってたので、Aさんみたいな有名人がいるのが少し意外で」
「……まぁ似合わない自覚はあるけど」
正直、オタクっぽいとかカッコつけてるとか思われるのが嫌で他言してなかった部分もあるし。
私だって図書室には誰も居ないと思ってた、だからこそ通ってたのに。
室内だし椅子も机もあるし最高の空間を独り占めしてたと思ってた。
……まさかこいつと共有してたとは。
「だから気になってよく見てみれば、「仮面の告白」を読んでたんですよ、三島由紀夫の。漫画か雑誌を読んでいるのだとばかり思ってたので驚きました」
……そう。
当時はそうやって言われるのが何か馬鹿にされてる気がして嫌だった。
今はそこまで捻くれてないけど、何となく居た堪れない気分になって俯く。
「……別に良いじゃん、昔から活字好きなの」
「僕もです」
その声に顔を上げれば、黒子は馬鹿みたいに柔らかい表情をしていて、こいつは顔に出やすいのか出やすくないのかわかんねぇな、と他人事のように考えた。
「その日から、貴女のことを気付けば目で追うようになりました。
図書室で、あなたが本を読む姿を見るのが楽しみになっていました」
「ごめんキモい……」
ストーカー?と呟けば、何も気にしていないような表情で黒子が微笑む。
「Aさんのそういう素直なとこ好きですよ」
「うっわ神経図太」
こんなやつの言葉に動揺する私の情緒が心配である。
私一応告白されたんだよな?
マジでなんであっちの方が優位に立ってるみたいになってんの?
……ってか今思い出したけど。
図書室は入学当初、授業中は基本月木しか鍵が空いてなくて、週2でしか通えなかった。
でも途中から何故かいつ行っても鍵が空いてるようになってて、不用心だなと思いつつも別に気にせずありがた〜くそれを享受してた訳だけど。
もしかしてと目の前のやつを見つめれば、言葉にせずとも伝わったのだろう、「それくらいの事しか出来ませんでしたから」と返される。
「気持ちを伝えようとは思っていなかったんですよ。……ただ、この歳になって結婚の話が出てきた時に、貴女の顔が浮かんだんです。
結婚するならAさんが良い、と」
「それでこうなったの?」
「はい」
「行動力の鬼かよ……」
「結ばなくても良い縁もある」→←「特に意味の無い懸け隔てを」
125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「黒子のバスケ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水団子(プロフ) - 歌柚さん» 話の展開を褒めて頂き光栄です、、!!!拙い文に亀更新で申しわけありませんが、楽しんで頂けると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - 光華さん» めちゃくちゃ嬉しいです、、恐ろしい程更新が遅いですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
歌柚 - コメント失礼します。ストーリや話の展開が面白くて楽しく見させてもらってます!ストーリ更新楽しみに待ってます!! (2021年7月13日 21時) (レス) id: f33fb75788 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 好きです!更新応援してます! (2021年5月16日 10時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - よもぎお餅さん» 黒子くんのお家に行こうと尾行したら見失った、というエピソードが好きでそこから色々と捏造を重ねたらこんな黒子くんが出来上がりました(^-^)主人公らしからぬミステリアスさが魅力だと思っています!コメントありがとうございました!! (2019年6月19日 20時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水団子 | 作成日時:2016年9月16日 0時