「着物姿の」 ページ21
まさかこんな金持ちだとは思わなかった。
あまりにオーラが無さすぎる。
これ程の家なら、名前ぐらい聞いた事ありそうだけど、と脳内で検索かけてみるけど、「黒子」なんて名前のつく大手企業なんて思いつくはずもなく。
黒子、ねぇ……
変わった苗字のはずなのに何となく覚えづらいのは、夏音さん達が黒子のことを忘れたのと関係があるのか、ないのか。
「体質です」って黒子は言った。
何となく家系的なものなんだと思う。
ぐるりと周りを見渡す。
部屋の中は異常な程に洗練されてた。
片付きすぎてると落ち着けないタイプだけど、ここは隅々まできっちりしてて、逆に何となくゆとりがあって清々しかった。
ちょっと黒子っぽいなとか考えたり。
「失礼します」
ガラス玉みたいな声が聞こえて、ガラリと障子が空く。
「……着物だ」
「部屋着がこれなんですよ」
障子を開けた黒子は群青色の和服を身にまとっていた。
変なの、髪水色な癖に、日本人っぽい顔してない癖に、似合う。
「着替え持ってきたので、良かったら。着替えたら夕餉にしましょうか」
「……は?なんで?」
「逆に制服で明日まで過ごすんですか?」
いやお前が脱がすんじゃないんかい。
頭の中でツッコミ入れるけど口に出せるはずもなく、とりあえず服を受け取る。
案の定それは着物だった。
「何かあれば外に居る方達に声を掛けてください。この部屋の近くにいるのはほとんど女性ですから」
女中(?)に対しても方達、とか言っちゃうあたり、とことん……
……っていうか女中にじゃなくてアンタ自身に用があるんですけど。
「どうかしました?」
「……何でもない」
いいや、別に。
多分夕飯の後になんかあるんだろう。
さっき「今夜は」って言ってたから、朝帰りになるのことは何となく想像ついてたし。
では、と出ていったのがわからない程静かに襖を閉めて、黒子は行ってしまった。
それと入れ違いになるように、女中さんが深く頭を下げてから部屋に入ってくる。
……この人たちは私のことをどういう立場だと捉えてんのか。
無駄に手厚い対応に、むしろ不安しか湧いてこない。
「失礼します。
お着物の着付け、お手伝いさせて頂きます」
「ありがとうございます」と軽く頭を下げて、着物を掬いあげたその人に近づく。
……正直着るつもりなかったけど、そう言われると断りずらい。
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水団子(プロフ) - 歌柚さん» 話の展開を褒めて頂き光栄です、、!!!拙い文に亀更新で申しわけありませんが、楽しんで頂けると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - 光華さん» めちゃくちゃ嬉しいです、、恐ろしい程更新が遅いですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
歌柚 - コメント失礼します。ストーリや話の展開が面白くて楽しく見させてもらってます!ストーリ更新楽しみに待ってます!! (2021年7月13日 21時) (レス) id: f33fb75788 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 好きです!更新応援してます! (2021年5月16日 10時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - よもぎお餅さん» 黒子くんのお家に行こうと尾行したら見失った、というエピソードが好きでそこから色々と捏造を重ねたらこんな黒子くんが出来上がりました(^-^)主人公らしからぬミステリアスさが魅力だと思っています!コメントありがとうございました!! (2019年6月19日 20時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水団子 | 作成日時:2016年9月16日 0時