【黒バス】R【黒子テツヤ】

「ギャップとかって」 ページ18

手を引っ張る黒子。

意外と足が速くて、息が少し切れてきた。


「ねぇ」

「何ですか？」

「10万なんて持ってんの？現金？」

「まぁ、はい」



なんで男子中学生が現金で10万なんか持ち歩いてるんだって。


実は金持ち？


……のわりには影うっすいし。ってかそんな噂聞いたことないし。

学校行ってねぇから噂とかよく知らんけど。



この界隈での常識。

女の子の体は、若く幼いほど価値が高い。


ストレス発散だの、好奇心だの、理由は色々あれど、どうせ一度だけの関係。



あっちからすれば、どうせなら、レア度の高いやつにしようって思うのは当然らしかった。



10万は、中１の私の“初めて”につけられた額。


今の私にそんな価値があるのかどうか。


明白すぎた。


こいつはどんな価値観を持って私に値札をつけたんだよ、って、段々イライラしてくる。



「なんで私買ったわけ」

黒子は答えなかった。


無視かよ、と呟くと、黙秘です、と返ってきて更にイラつきが増す。



その感情をため息で外に逃がして、ふと周りを見渡してみた。



さっきまでホテルだらけだった周りの景色は、今はビルとか店とかになってた。

穴場でも知ってんのか、段々とホテル街から離れてってる。


「どこ向かってんのこれ」


引っ張られるまま走ってるけど、目的地わかんないまま歩いてるのは気持ち悪い。


と思ったら、黒子から意味のわかんない返答。


「ボクの家です」


何言ってんだこいつ。

家でやろうとしてんのかよ、みたいな。


どんな顔して言ってんのか気になったけど、後ろからじゃ表情はよくわからない。


まぁどうせ無表情だろうけど。



そもそも中学生が買う側にいんのはおかしいだろってようやく冷静になってきて。


黒子は初めてなんかな。


それにしては落ち着き払ってるし、意味がわかんない。



だってこんなに綺麗なのに。


こんな透き通った見た目をしてる癖に、こういうことをするもんだから、頭がこんがらがる。



初めて黒子を見た時もそうだった。



多分私は、こいつの見た目と行動とのチグハグさに戸惑って、それが頭の中に絡みついて。



離れなくなってた。





あんまり、引っ張られんのが心地よくなくて。


桃井とか薫里とかとは違う、甘えるとかじゃない、引きずり込まれてる感じ。



違和感しかなくて、掴まれてた手を振り切った。

「夢だとかマボロシだとか」→←「埋まる」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す