劣等少女の病名【2】 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:18,760 hit

53.桜と春風の話ページ6

怒られるかなぁとドキドキしたけど、雲雀さんは｢ふーん｣というだけでそれ以上何も言ってこなかった。意味分かんない、とか、馬鹿なんじゃない？とか言われると思ったのに。何だか覇気がない。

｢ぁ……そ、そうだ！雲雀さん、風紀委員として早く取り締まりに行かないと｣

桜を見て少し表情が曇った。そこで気付く、サクラクラ病のことを。治ったとはいえ、もしかしたら結構引きずっているのかもしれない。雲雀さんの好きな物が戦うことくらいしか思いつかなくて、つい取り締まりに行こうと言ってしまった。

＿＿ごめんなさい。見ず知らずの群れてる人達

｢今日は始業式ですから、服装の乱れてる人も多そうですし。その辺は私たちが頑張ります｣

｢頑張るのは自由だけど、余計な仕事は増やさないでよね｣

いつもの調子に戻ってきた雲雀さんは、くるりと身を翻して学校方面へ歩いていく。舞い散る桜と雲雀さん、すごく綺麗な組み合わせなのにな。先を行くその人に置いていかれないよう、少し後ろからついて行くのにも慣れたものだ。

学校に着くまでに後悔した。春風は意外と強くて、髪がやばい。長い髪が荒れ狂っている。ポニーテールなんてあの日だけで、今日ばかりは結べばよかったかもと思った。

雲雀さんといるだけでも目立つのに、周りからヒソヒソと｢貞子だ｣｢亡霊だ｣って聞こえるのが地味に傷つく。だって、だって後ろから風が吹くから！髪が自然と前にきちゃうんだ！しまいには絡んできて、なのに雲雀さんは見向きもしない。

｢あの雲雀さん、櫛とかゴムとか｣

｢持ってるわけないでしょ｣

｢そ、そうですよね…｣

分かってはいたけど。女の子の友達なんて学校にいないし、そして女子力も無い私は櫛やらゴムやらを常備していない。学校に着くまで、周りから"雲雀さんの背後霊"扱いされた。

風紀委員は各自校内を巡回したり、門の前でチェックしたりしている。草壁さんの姿が見えないけど、恐らく引っ張りだこなんだろう。今日は本当に忙しくなりそうだ。

｢な、なんか騒がしいですね……人集りも｣

｢あそこ、クラス分けの張り紙がされてるから｣

｢そうなんですか｣

前方には春服に身を包んだ並中が群がっていた。どこからどう見ても雲雀さんの的だ。その的の中に、見知った顔を見つけてしまう。

｢十代目はいいんですか！？こんなデタラメ、認めるんすか！！｣

獄寺さんの声ここまで聞こえてるよ。それに事情を知った今だから思う。十代目って呼ぶの、アウトなのでは。