これを恋と呼ぶのなら。【切原赤也】

恋煩い９ ページ9

あー、だるい



昨日は全然眠れず、結局ゲームで徹夜した



本当は朝練だって休みたかった



いっそサボってやろうか迷ったくらいだ



でもそんな事部長が許すわけもなく、部室でダラダラしてるのがバレて倉庫から予備のボールを持って来るように言われた



倉庫の中に入っていくと話し声が聞こえる



丸井先輩と、もう1人は…



佐藤先輩？



２人で笑いながら楽しそうに話してる



何なんだよ、昨日は泣いてたのに



一晩寝れば忘れられるくらい、軽い事だったのかよ



黒い渦がグルグルと胸の中をかき乱す



「お、赤也！何でこんなとこ居んだよ？
ま、いいや、これ運ぶのお前も手伝えよ！」



「げ、丸井先輩…」



あからさまに嫌そうな顔をすると、こめかみをぐりぐりされる



「先輩に向かって“げっ”はないだろい？」



ニコニコしてるけど、青筋が浮き出てる



「すみませんって！冗談っすよ、冗談！」



「えっと…早く行かないと、幸村が怒っちゃうかも」



「うわ、それこそ最悪…ほら、A行くぞ！」



そう言って佐藤先輩の指に自分の指を絡めた



「…え？」



その光景を見て、思わず声が漏れる



「ん？どうかしたか？」



「いや、先輩達って付き合ってましたっけ」



丸井先輩なら、そんなわけねぇだろいって笑い飛ばしてくれると信じてた



なのに、何でだよ…



丸井先輩は俺の質問頬を染め、佐藤先輩をちらりと見る



「ま、まぁ、そう言う事…だよな？A」



「うん…」



２人のやりとりに、頭は既についていってない



「てかさ、お前、昨日LINEで報告したの見てないのかよ？テニス部のグループ」



そう言えば昨日、ゲームに熱中してる時にケータイの通知がうるさかったから電源を切った気がする



「いや、ちょっと充電切れてて…」



ははっ、と笑ってみせるけど目は佐藤先輩に向いている



嘘だよな？



何で嘘って言ってくれねぇんだよ



「ま、そう言う事だから手ぇ出すんじゃねーぞ、赤也！」



「わ、わかってますよ！」



「んじゃ、先行っとくぜい」



丸井先輩が佐藤先輩の手を引いて走り出した時



「…ごめん、ブン太。先に行っててくれないかな」



「なんで……わかったよい」



一瞬眉をひそめたけど、直ぐにいつもの笑顔に戻って走って行った



取り残された後、先に口を開いたのは俺だった

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