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「……潤？」
「はい、何でしょう」
「何か悩みごとでもある？」
「……いえ、大丈夫です。
ご心配をかけて申し訳ございません」
俺が隠し事をしていることを
きっとあなたは気付いている
「辞めたかったらいつでも」
そう言いながら
いかないで、と目で訴えるあなたから
どうやって離れろというのだろう
「そんなこと、これっぽちも思っていませんよ」
「そ……う？」
「はい」
微笑んで見せると、まるで幼子のように顔を輝かせる
あなたが事故に奪われた幸せを
俺は少しでもあなたにあげられたらと、想う
あなたが両親から貰うはずだった愛を
俺が少しでもあなたに伝えたいと、心から願う
あなたの歩む未来の脇役でいい
ずっと側で、見守っていたい
「ねえ、潤」
「どうされましたか」
「マイから、妹から、電話があったんだ」
「……マイさまから？」
自分と繋がっていることによって
妹までも不幸にすることを恐れ
十年前に連絡を絶ったきりだったはずだけど
それでも翔さんに伝えなければいけないことが
彼女にあったのだろうか
「お見合いをしないかって、言われたんだ」
「そ……」
……そんなことで、連絡を？
喉まで出かかった言葉を慌てて飲みこんだ
「そう……ですか」
養女として貰われ
実の娘のように可愛がられた彼女には
兄に電話をかけることなど容易いのかもしれないけれど
「お兄ちゃんを引きとれなかったことは
お母さんもお父さんも責任を感じているから
攻めて結婚相手にふさわしい女性を見つけて
償いをしたいって」
お願いだから
少しの風でも消えてしまう小さな蝋燭の炎のような
脆く壊れてしまいそうな彼を
傷つけることだけはやめてほしい、と
会ったこともない彼の妹に向かって呟いた
俺にはこんなことを言う権利は、ないけれど
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作者名：storm quintet x他4人 | 作者ホームページ：.
作成日時：2014年10月29日 23時
