PARACAGE 8th【ars】 (ページ24)

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269.思春期。ページ24

「どんな呪いをかけてたの？」
「いやそれは言えないってば」
「藁人形とか使った？」
「そこまでじゃないけど、軽い黒魔術とか？ンフフ」

うそだー！なんて話してたら、智くんがリビングに入って来た。

「寒いっ！何で窓開けてるの？」

縁側に居る私たちの所まで来て、庭にぶらぶらしてる二人の脚を「よいしょ」って持ち上げて窓を閉めてしまった。

「こんな事してたら、風邪ひくよ？」

智くんがしゃがんで心配そうに私とニノくんの顔を覗き込む。
ハーフパンツから伸びたその足は裸足で、私達よりも寒そう。

「あれ？Aちゃん、ニノに意地悪でもされた？」
「え？」
「涙目」

チラッとニノくんを見た智くんが「原因はニノじゃないね」と、困ったように笑う。
ニノくんは、またゴローンと仰向けに寝そべった。

「Aちゃん、相葉ちゃんっていつ帰って来るの？」
「あ...一週間後」
「じゃあ一週間は、おれ達がAちゃんに何しても良いのか」

智くんの言葉にニノくんが「何だそれ！セクハラ！」って大声で突っ込む。

「セクハラって思うニノこそ、何を考えたのかなー？こんな所にちびっこいオオカミが1匹紛れてたんだね」
「ちびっこいって何だよ、あんたもちっこいだろ！」
「オオカミは否定しなくていいの？」
「オッ...Aに対してえろい気になんかなんねぇし！」
「別にえろい話なんかしてないよ？オオカミって言っただけで」

あはーって笑ってる智くん。
勢いよく起き上がったニノくんが、智くんの肩にパンチした。小学生みたい。

「じゃあ、おじさんの言うAに対して『何しても良い』って何なのよ」
「んー？可愛がってあげるってだけの話だよ？」
「えっろいじゃん！」
「もうやだなぁ、さっきからそればっかり。ニノの頭は思春期のまんまだねー？」

智くんが私に同意を求めて来たから、とりあえず頷いておいた。
私もニノくんに軽くパンチされた。

「うちの中に元気無い子がいたら、元気出るように可愛がってあげる。それだけの事だよ」

ふふ、と穏やかに笑って智くんが話す。

「これまでだってそーだったでしょ？」
「まぁ、ね」
「でしょ？」

私が来るまでのテラハウスで何があったのか、私は知らないけれど。
皆を見てると、きっとお互い何かあった時は支え合ってたんだろうなって事は分かる。

友達よりは近くて、家族よりは離れてる。

ちょうど良い距離感で、彼らは暮らして来てたんだ。

私が、来るまで。