失楽のウンディーネ 6【イナイレ】

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「こら、こーら、いけないよ、そんな顔。


折角の美男子が台無しじゃないか」


頭を撫でて宥めると、その少年は少し嬉しそうに、彼女のその少しぎこちない愛情表現を傷痕だらけの身体いっぱいで享受していた。


すまない、と小さく彼女が謝る、別に気にしてないと返した。


風に乗ってきた歌声が私たちの頬を撫でた、少年と、同じくらいの女の子の声。




……ヒロトは、どうしているだろう。


「……寂しそうですね」


彼女が敬語に戻った、その瞬間、船の傍にいるイルカや魚を眺めようとキャラバンから降りてきた子達。


「……そうね、そうかもしれない」


もう一度彼を見ると、彼は海を初めて見たもののように、年相応に目を輝かせている。


水飛沫が飛ぶ、向こうでクジラが尾鰭を海面に叩き付けた弾みのようだ、それを彼等は一等綺麗なもののように見ている。


彼女だけがそれを、さも珍しいものでも無いだろうと、心底どうでも良さそうに、けれど少しの哀愁を湛えた目をしていた。


「……貴方、凄いのね」


「ふふ」


彼女はさも可笑しそうに笑う。


「真似事でしょう、所詮」

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