32手筈は整えられた ページ36
夢主side
──雇用証明書の紙ってどうしてるの?──
私みたいなヘタレがそんな怖いこと聞けるわけがないだろう!
仕事は終わり、自分のヘタレさに呆れと憎悪を抱きながら家への帰り道をトボトボと歩く。
「やあ、こんばんは」
向かいから歩いてきていたフードを深く被っている人が手を上げ私の方を向いて挨拶した。
私のことが見えてる…?
まさか、ありえない。
私の後ろにいるこの人の知り合いとかだろう。
実際そういうことはよくあるし、そう思ってその人の横を通り過ぎようとした。
だけどその考えは次の言葉で否定される。
「無視は酷いなぁ、AAちゃん」
すれ違うその瞬間にその人は私にしか聞こえないような声で言った。
確かに言ったのだ"AA"と。
私の記憶にこの人はいない。知らない人だ。
私はその人と距離を取り身構える。
頭の中の警鐘が鳴り響く。
なんで?何で名前を知ってるの?
わかんないわからない
怖い恐いこわい…
"何で"、なんて少し考えれば心当たりが出てくるハズなのに私はパニックで頭が回らなくなっていた。
「そう警戒しないでよ」
ゆっくりと振り返るその人は姿も声も抽象的で男か女かを特定することは難しい。
その人は九十九屋と名乗り、話があると言って近くのファミレスに場所を変えた。
正直怖いし怪しいし、警戒を解いた訳じゃない。
だけど話があるというのは嘘じゃなさそうだし話だけならと着いてきたのだ。
「話って何ですか?」
冷静を取り戻した私は、店内でもフードを被ったままの九十九屋さんに聞いた。
だけど彼は私の問いにせっかちだねと肩を竦める。
いやいや、誰だって同じように聞くよ!
心の考えは口に出さずに不満全開の表情をすると九十九屋さんはわかったよと、机に身を乗り出して話を始めてくれた。
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作者名:儚きPIERROT x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=h0ak9an0ai6
作成日時:2015年5月17日 17時