Another:岩崎 ページ48
森さんとともに部屋へと戻る。
Aさんは部屋を出る前と同じ場所にちょこんと座っていた。
その視線はぼんやりと畳を眺め、こちらに気付いていない様子だ。
「お待たせしました」
声を掛けるとAさんはこちらを向く。
「こんばんは、Aちゃん。数日ぶりだね」
『森さん……?こんばんは。いらしてたんですね』
森さんとAさんは知り合いだったらしい。
キョトンとするAさんを蚊帳の外に、森さんが診察をすすめていく。
額に触れ、首回りに触れ、顎に触れ。
Aさんも何をされているのかは理解しているようで抵抗する様子はない。
少々複雑な気持ちで様子を見守る。
「ふむ。僕の所見としては “発熱” だね。病原菌等からの風邪による発熱ではなくて、環境の変化による疲れからのものだ。見た所、他の症状は何もなさそうだから、食事と睡眠をしっかりとることをおすすめするよ」
森さんは顎に手を当ててそう告げた。
「すみません、森さん。ありがとうございます」
頭を下げてお辞儀をする視界の端に、Aさんが慌てて頭を下げる姿が見えた。
私は森さんが自室へと戻る姿を見届けたのち、Aさんに声を掛ける。
「Aさん、今日はお終いにしましょう」
『え、でも、まだお時間ありますし……』
「貴方の体の方が大切でしょう?」
『花代を頂いているのに……出来ません……』
「熱のある状態で働く程、非効率なこともありませんよ。判断だって鈍るでしょう」
『でも……』
それでもなお引き下がらないAさん。彼女の中、今の時間は “仕事” 。途中で投げ出したくないのは分かる。
しかし、残り時間は最後の一本が燃え出したばかり。病人に付き合ってもらうには長すぎる。
彼女の意見を受け入れ妥協するのは簡単だが、こちらとしても譲れない。譲ってしまえば彼女の体に大きな負担をかけるてしまう。
どうしようかと考えた末、
「分かりました。では、私に膝枕をさせて下さい」
『……え?』
私がAさんを膝枕するという妥協案を告げた。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時