第50話 ページ3
主人公side
「東 乙女。Aとは双子なの。
乙女ちゃんって気軽に呼んで頂戴ね!」
俺の隣ではアイスコーヒーに挿さるストローで遊びながら、桜乃ちゃんに向けてウインクをした乙女が座っている。
クスクス笑いながらチラチラ俺を見るあたり、やっぱりこいつは性格が悪りぃ。
このままだと殴りかかってしまいそうな右手をズボンのポケットに突っ込み、ため息を吐きながらホットコーヒーを啜った。
「りゅ、竜崎 桜乃です!
東さんには、と、とても、お世話になっています!」
俺の会い向かいに座る桜乃ちゃんも、両手でカップを持ちながら少し緊張気味に乙女に自己紹介をしている。乙女に対して軽く殺意が湧いた後に桜乃ちゃんの笑顔を見るといつもより何百倍も癒された。
「Aが落ちるだけあるわ」
ポツリと呟く乙女。
心の中でそれは肯定する。だが、俺と桜乃ちゃんのショッピングデートは開始早々にこの悪魔の様な女に潰された事は許せない。
しかもこいつが隣にいるというのに喫煙席のない、喫煙所もない、全席禁煙のカフェに移動とか嫌がらせとしか思えず、ポケットに入れた右手が拳を作り震えた。
「あの、乙女さんは______ 」
「乙女ちゃん」
桜乃ちゃんが名前を呼んでくれただけでも羨ましいのにそんな要求をする乙女が恐ろしかった。
俺だって桜乃ちゃんに名前で呼ばれてねぇんだぞ!?
表に出さず内心暴れ回っている俺は静かにホットコーヒーを飲む。
「乙女ちゃんも、テニスされていたんですか?」
「見学専門よ。スポーツよりも楽しいことがあったからそっちに夢中だったの」
「そうなんですね!」
ホットコーヒーを吹き出すかと思った。
桜乃ちゃんがさらりとこいつの要望通りに乙女の名前をちゃん付けで言ったのにも、理不尽なストレス発散を楽しい事と言ってのけた乙女にも。
てかこれ俺と桜乃ちゃんのデートのはずなのになんで俺がハブられてんの?
帰れ、そうポツリと呟いた苛立ちを含んだ俺の言葉は乙女には届いていたようで、何故か俺にウインクして乙女は口を開いた。
え、何、気味悪りぃんだけど。
「そろそろ帰ろっかな」
「は、はい!気を付けて下さいね。乙女ちゃんとっても綺麗だから……」
「うわぁ、いい子ぉ……。あ、ねぇ桜乃ちゃん。
東で呼ばれると私が混乱しちゃうからAのことも名前で呼んであげて」
それだけ残してさっさと帰った乙女がこの時だけ女神の様に見えた。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時