第9話 ページ12
Aside
教室に七海 春歌の姿はなかった。
彼女はどうやらAクラス。Sクラスの決められた座席表を見ても、わたし以外の原作外の存在はいない。
席についてぼんやりとしていると、視線を集めているのか痛いほど視線がささる。
特に馴れ合う必要はない。
どうせ1年しかいない世界、詩音ちゃんや楽以上に仲良くなる様な存在もいないだろう。
「おら、席につけ!」
大きな音を立てて入ってきた大柄な厳つい男は大きな声を出しながら教卓前に立つ。
知識にある事を聞いても仕方ないので、窓際の席から窓の外を眺めていた。
「さっきから窓の外を眺めてるお前。自己紹介しろ」
想像していなかった台詞に、教卓へ目を向ければ担任の日向先生からの視線おろか教室中の視線がわたしへ向けられていた。
とりあえず席から立ち上がり、にんまりと笑顔を向ける。
「
身長は168センチ、体重スリーサイズはひ・み・つ。
ご覧の通り天性の美貌とスタイルを武器にアイドル目指してまーす」
ウインクもおまけですればしんとした空気と日向先生の溜め息。
この世界でアイドル活動する気もないし、適当に自己紹介をしたわけだが。
「こんなのがトップとは……」
その小さな呟きにざわつきが生まれる。
トップ、あらま。わたしトップ合格。
本来ならトップ合格はあそこで無愛想な顔している一ノ瀬 トキヤの筈だけれど……。
まぁ、現役アイドルといえどわたしの様なトップアイドルには勝てっこないか。
「まぁ実力はズバ抜けてるし、多めに見てやる。次!」
席につき、またぼんやり外を眺めてる。
受験受けたのわたしじゃないし、トップで合格しちゃってもきっと原作に支障ないよね?
続く自己紹介をスルーしていると日向先生の大きな声が耳を突く。
「今日から一年間、作曲家とアイドルは2人1組で一緒にプロを目指してもらう!
っつーことで、今からクジ引きだ。
作曲家コースは赤い箱、アイドルコースは青い箱から。
クジで決まったパートナーは変更不可だからな、気合い入れて引けよ!」
適当に青い箱から引いたクジにはハズレの文字。
Aクラスのクジ引きだとヒロインは一十木 音也とパートナーになるわけだけど、ハズレクジは入ってなかったはず。
「ハズレ……?」
「は?……くそ、林檎のやつ」
ハズレクジを見た日向先生のスマホが鳴る。
電話越しに怒鳴る彼は、わたしの方へ向きニヤリと笑った。
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月13日 22時